Asia

2011.09.07

自治体における電子政府サービスの成熟度診断モデル開発の研究

韓国において電子政府は対国民サービスと効率的な業務遂行を可能にする点で政府にとって重要な活動の1つであり、その成果は国際的にも調査、比較が行われている。そこで、次に生まれてくる疑問は自治体における電子政府活動はいかなる水準にあるのかという点である。本研究はそのような視点から出発したものであり、基礎自治体を対象に当該機関が成熟度を自ら測定、管理するコンサルティング型測定基準を整備するための基礎研究として実施されたものである。

本記事は、韓国地域情報開発院発行の機関誌「Local Information Magazine Vol.64 2010.9」の一部を当研究所において翻訳したものである。_

 

韓国地域情報開発院 政策研究団 専任 ソ・ウンジン

 

【研究背景と目的】

韓国において電子政府は対国民サービスと効率的な業務遂行を可能にする点で政府にとって重要な活動の1つであり、その成果は国際的にも調査、比較が行われている。そこで、次に生まれてくる疑問は自治体における電子政府活動はいかなる水準にあるのかという点である。本研究はそのような視点から出発したものであり、基礎自治体を対象に当該機関が成熟度を自ら測定、管理するコンサルティング型測定基準を整備するための基礎研究として実施されたものである。

 

【電子政府評価の現状(1)国外】

1)国連の電子政府発展指数
国連経済社会局は電子政府を「市民に政府情報とサービスを伝達するためにインターネットとワールドワイドウェブ(WWW)を使用する政府」と定義し、加盟国の電子政府活動の程度を2001年から評価している。
国連の電子政府発展指数(2009年までは電子政府準備指数)は国家の電子政府発展情報を相対的に比較するために開発された評価基準であり、オンラインサービス、情報通信インフラ、人的資質から構成され、オンラインサービスの場合は5段階(2009年からは4段階)モデルを定義して測定している。2009年の評価では韓国が1位を占め、優秀国家として注目された。

2)EUの公共サービス成熟度調査
EUは2001年から加盟国を対象に、市民と政府の相互作用の程度、市民参加の程度、サービス提供の能動性・自動化の程度を指す5段階(情報→一方向の作用→相互作用→相互交流→対象化)の公共サービス成熟度を調査している。2009年の調査では、ヨーロッパは5段階中の4段階目である相互交流の段階であった。

3)米国のデジタル政府調査
米国の電子政府センター(The Center for Digital Government)では、50の州政府を対象に、2004年から隔年で電子政府サービス提供と内部運営の変革のための情報技術の活用度の評価や電子政府政策の最新事例の調査を行っている。この評価の特徴は、公共サービスのオンライン提供のみならず、電子政府に向けたケイパビリティや政策と戦略、情報化組織と人的資源など、組織的次元も考慮して評価する点で総合的な性格を持っている。

 

【電子政府評価の現状(2)国内】

行政安全部は、地方自治体の電子政府推進度を評価するために2008年まで地方自治体電子政府推進評価を遂行してきた。主要評価項目は情報化投資の予算比率、情報化人員の比率、情報システム構築の実績、情報化村の支援推進、情報化教育水準、情報化教育実績であり、これらの評価資料を基礎にコンサルティングを同時に推進した。
翌年の2009年に地方自治体電子政府推進評価は地方自治体政府業務評価に吸収された。評価対象は主に広域自治体であり、中央政府の情報化政策を地方自治体において履行しているかを評価するものである。

他方、行政安全部は行政機関のホームページを診断し、コンサルティングを行っている。

 

【自治体における電子政府サービス成熟度の規定】

より良い電子政府サービスを提供するためには、より良いオンラインサービスの実現だけでなく、関連する内部行政業務の再設計、予算・組織の構成、情報化人員の能力の強化が同時になされる必要がある。したがって、本研究では自治体の電子政府サービス成熟度を、自治体がITを利用して提供する住民行政サービスの水準と、これを提供するための機関の情報化能力の水準と定義する。

前者は、自治体の公式ホームページを通じて提供する住民行政サービスの水準を意味し、主要な診断領域は、サービスの多様性、サービスのアクセシビリティ、サービスの住民志向性、サービス品質の4つである。
後者は、自治体において電子政府サービスを提供するための機関の準備の度合いや、機関および機関の構成員の情報化能力を意味し、主要な診断領域は、情報化戦略、情報化支援、情報化基盤、情報活用度、情報化による効果の4つである。

なお、本研究では点数を基準にして相対的順位をつけるのではなく、行政機関が自らの段階と特徴を確認できるようにすることで、電子政府サービス成熟度の水準を管理できるようにしたものであり、そのために5段階モデルを設定している。
・第1段階 情報化基盤段階(基盤を構築中で、電子政府サービスの側面で見ると、住民がアクセスできるオンラインサービスの窓口構築を強調する段階)

・第2段階 機関情報化段階(サービスの側面において、公式ウェブサイトで情報提供、行政サービス提供、政策参加機能など多様な電子政府サービス機能を実現し提供する段階)

・第3段階 住民サービス情報化段階(最初に構築した電子政府サービス機能の高度化や活用、および住民との双方向性を強調する段階)

・第4段階 統合情報化段階(より住民志向的なオンライン電子政府サービスを実現するための努力がなされ、個別的に運営されてきた電子政府サービスを統合管理する段階)

・第5段階 戦略的革新段階(革新を行う段階で、電子政府サービスの側面で見ると統合行政サービスのシームレスな行政サービスが実現され、住民の積極的オンライン参加が行われる段階)

 

【基礎自治体に関する調査結果】

基礎自治体の電子政府サービス水準の分析の結果、全回答機関(232の基礎自治体のうち104が回答)を対象にすると、平均して第3段階の住民サービス情報化段階にあることがわかった。段階別の機関分布状況を見ると、第1段階と第5段階に位置する基礎自治体はなかったが、第2段階に位置する基礎自治体は20.2%、第3段階に位置する基礎自治体が73.1%、第4段階に位置する基礎自治体が6.7%であった。

 

【結論】

本研究では、基礎自治体の電子政府サービスの成熟度を測定し方向性を提示できる基準として、自治体の電子政府サービス実現水準と当該機関の情報化に対する能力を図るモデルの作成を試みた。しかしモデルや基準の作成に留まっていては本来の趣旨を実現することは難しい。このような基準が情報化計画の樹立やコンサルティングにおいて十分活用されることによって、自治体の情報格差解消と均衡的な情報化の発展と基盤整備を支援できるようにならなければならない。そしてその基準は、自治体の電子政府推進活動に対する診断及び改善方案を提示できるようにつくられるべきで、情報技術の変化と政策方向などを考慮して常に改善されなければならない。また国際的にも比較できる基準を一緒に提示することにより、今や世界の中の地方という次元で自治体の情報化競争力を可視的に示すことができるようにすることも必要である。

 

参考文献

・CDG(2008), Digital States Survey. Executive Summary.

・EU(2009), Smarter, Faster, Better eGovernment. 8th Benchmark Measurement. November.

・UNDPEPA&ASPA(2002), Benchmarking E-government: A Global Perspective.

・UN(2008), E-Government Survey2008: From E-Government to Connected Governance.

・UN(2010), E-Government Survey2010: Leveraging e-government at a time of financial and economic crisis.

・中小企業庁・中小企業技術情報振興院(2009)、「2009中小企業情報化水準調査」

・行政自治部・自治情報化組合(2006)、「2005地方自治情報化評価」

・行政自治部・自治情報化組合(2007)、「2006地方自治体電子政府推進評価」

・行政自治部・韓国地域情報開発院(2008)、「2007地方自治体電子政府推進評価」

 

※翻訳協力;特定非営利活動法人コリアNGOセンター東京事務局長 金朋央氏