機関誌記事(記事単位)

2020.04.10

2020年4月号連載企画 行政情報化新時代 No.52 シェアリングエコノミーから生活様式と都市の変容を考える

武蔵大学 社会学部
教授 庄司 昌彦

1.スマートシティとシェアリングエコノミー

現在、世界では都市への人口集中が進んでおり、そこから過密化や、多様な人々の共存に伴うさまざまな社会問題への対応の必要性が増している。そこで、近年のビッグデータ処理技術の向上やオープンデータ政策の浸透を背景に、企業や研究者、市民団体等は、情報通信技術の活用の場として、都市への関心を強めている。

技術を活用して人々にとって住みよい環境を実現した都市は「スマートシティ」と呼ばれる。ただしスマートシティとは、雲を突き抜けるような高層ビルが立ち並び、ロボットが歩き回り、自動運転車が走ったり空を飛んだりするような「未来都市」を作るということではない。実際には映画やアニメで描かれてきたような都市インフラ整備を目指す動きもあるが、多くのスマートシティが目指しているのは、環境負荷の低減や、混雑問題への対応、文化的多様性の実現など、生活の質を高めるソフト面の目標達成である。