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2020.08.07

2020年08月号連載企画 行政情報化新時代 No.54 「はんこ問題」から考える新型コロナウイルス対応

武蔵大学 社会学部
教授 庄司 昌彦

1.テレワークが直面した「はんこ問題」

新型コロナウィルスの感染拡大への対応は、世界的に見ても国内を見てもなかなか収束が見えない状況が続いている。ワクチンの開発・普及などによって世界全体で完全に抑え込むことができるまでには、まだ時間がかかると予想されている。今後数年間は、人と人の接触を避け、「新たな生活様式」を確立し続けていく必要があるだろう。
そこで大きな役割を果たすのがICT(情報通信技術)である。感染状況の把握と伝達、対面や接触を避ける中での業務継続、申請手続の受付など、ICTの活用が様々な場面で試みられている。特に働き方に関しては、オフィスが多く集まる都市部にはなるべく出かけず、自宅からテレワークで行うことが求められた。テレワークは働き方の選択肢の1つとして定着していくだろう。
東京商工会議所が「テレワークを実施した際に生じた課題」について2020年6月に会員企業に対して行った調査(※1)によると、回答者全体ではネットワーク環境の整備や機器の確保、情報セキュリティなどハード面の項目が上位を占めたが、緊急事態宣言発令前からテレワークを実施していた企業では「書類への押印対応」が1位(60.1%)となった(全体でも第5位の49.9%)。ハード面の環境整備ができても、いわゆる「はんこ問題」がテレワーク実施の障害となっているという(図)。
図 テレワークを実施した際に生じた課題

(出典)東京商工会議所の調査結果
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367

(※1)東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」2020年6月
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1022366