機関誌記事(記事単位)

2023.02.10

2023年2月号 連載企画 イノベーションのためのサービスデザイン no.15 DX推進におけるサービスデザイン

株式会社コンセント 代表/武蔵野美術大学 教授/
Service Design Network 日本支部 共同代表
長谷川 敦士

1.DX白書とデジタルスキル標準

 独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は、2021年12月、デジタルトランスフォーメーションの推進をめぐる社会背景、求められる戦略や人材、技術を日米の比較から論じている「DX白書2021」1を公開した。同書ではDX推進のために必要な考え方や方法論などが述べられている。また、各種統計的な情報も掲載されている。
 その中で興味深いのはDX推進の手段として、デザイン思考とアジャイル開発、DevOpsが挙げられているところである。アジャイル、DevOpsはそれぞれ開発手法やそのマネジメント手法であるため、DXとの親和性が高いことはわかりやすいが、デザイン思考が第一に挙げられている点が興味深い。同白書の中では、デザイン思考は顧客価値を探索し、実現するための重要な手段として位置づけられており、単なる「デジタル化」におさまらない「デジタルトランスフォーメーション」において、「なにをやるか」を設定するためにデザイン思考が求められているということがわかる。
 このDX白書を受けて、経済産業省/IPAでは、今年度(2022年度)に「デジタルスキル標準」と呼ばれるDX推進のために必要なスキルセットをまとめ、2022年12月21日にver.1.0として公開を行った。ここでは、「DX推進」を具体化し、組織規模やDXの段階(成熟度)などを踏まえ、その中で求められる職能や、そこに対応するスキルを整理している。