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2026.02.02

2026年2月号 トレンド解説 空き家対策を支える データ利活用の最前線 ―分析から施策へとつなぐ技術と実践―

東京都市大学
建築都市デザイン学部都市工学科 教授
秋山 祐樹

1.3 本稿の構成
 本稿では、空き家の現況把握および将来予測に向けたデータ利活用の先進的な取り組みを2章において3つのアプローチに分けて紹介する。まず2.1では、住民基本台帳や水道使用量など自治体が保有する様々なデータ(以下「行政データ」)を用い、建物単位で空き家か否かを判定する手法を示す。続く2.2では、行政データの活用が難しい自治体を対象に、車載カメラやドローンで取得した建物外観画像を用いた空き家判定手法を紹介する。2.3では、住宅・土地統計調査や国勢調査といった全国共通の基幹統計を活用し、将来の空き家分布を推定するモデルの構築について述べる。最後に3章では、これらの成果を地域住宅政策や都市経営へどう実装・展開していくかを論じる。

 

2.データを活用した空き家分布把握の取り組み

 本章ではデータを活用した空き家分布把握の具体的な取り組みを3つ紹介する。

2.1 行政データを活用した空き家分布推定
 筆者らは、行政データを活用し、空き家分布を効率的かつ低コストに把握する技術の開発を進めてきた。具体的には、住民基本台帳や水道使用量などのクローズドな行政データを用い、機械学習モデルによって戸建て住宅ごとの空き家確率を推定する手法である。本手法は、現地調査の負担を大幅に軽減しつつ、町丁目単位や建物単位といったミクロな粒度で空き家の分布を可視化できる点が特徴である。
 たとえば前橋市(秋山ほか, 2024a)や和歌山市(Sayuda et al., 2022)では、一部地域の現地調査結果を教師データ(目的変数)とし、住民基本台帳や水道使用量情報、建物登記情報などから得られる、住民の年齢構成や世帯人数、水道の使用実績、建物の構造・築年数など多様な変数を統合したデータベースを構築した。そしてこれを説明変数としてXGBoost等の機械学習により空き家確率を推定した結果、個々の住宅について空き家確率を高精度に推定することが可能になりつつある(図3)。

 

図3 建物ごとの空き家確率の推定結果(前橋市の例)

(出典)筆者作成

 

 本手法の大きな利点は、空き家か否かを厳密に分類するのではなく、「非空き家である確率が極めて高い住宅」を優先的に抽出する点にある。これにより、自治体が行う現地調査において、調査不要な建物をあらかじめ除外できるため、調査対象を大幅に絞り込むことが可能となる(図4)。たとえば、前橋市における推定結果(秋山ほか, 2024a)では、空き家確率が30%未満と推定された住宅のうち、99%以上が実際に非空き家であることが確認され、現地調査の効率化に資する高い精度が実証された。

 

図4 建物ごとの空き家・非空き家判定結果を活用した現地調査の負担軽減の可能性

(出典)筆者作成

 

 さらに、本手法は山形市、吉備中央町、白馬村など様々な地域でも有効性が確認されており、都市規模や地理的条件を問わず高い汎用性が示された。既存の行政データを活用することで、追加的な整備コストをかけずに継続的なモニタリングが可能となり、戦略的な空き家対策の基盤として活用が期待される。
 今後は、さらなるモデルの改良とともに、他自治体への水平展開を通じて、全国的な空き家対策の基盤整備に寄与することが期待される。

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