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2020.12.10

2020年12月号連載企画 withコロナで加速すべきは誰のためのデジタル・ガバメント? 第2回 スマートシティとデジタル・ガバメントへの扉を開くために~カギは住民のコエを聞き、伝える仕組みに~

株式会社アスコエパートナーズ
取締役 北野 菜穂
PR&コンサルティングユニット シニアマネージャー 齋藤 好美

1.はじめに

2020年に入ってすぐに新型コロナウイルス感染症がパンデミックとして発生し、あっという間に世界のパラダイムを変える未曾有の危機として広がりました。三密を避けながら日々の暮らしや働き方を維持する必要に迫られ、あらゆる分野でのデジタル技術の活用が必要不可欠となりつつあります。「ウィズコロナ」というキーワードもメディアに見られるようになりました。確かに、新型コロナウイルス感染症は、これからの街づくりやコミュニティ運営に対して、意識変容を突き付けています。一人一人の「より良い暮らし、安定・持続した生活を求めたい」という想いは変わらずに、しかしなお「ポスト・新型コロナウイルス感染症」という未来社会を考えていかなければなりません。
さて、コロナ禍の長期化により従来のビジネスモデルに基づいた経済活動の停滞が生じている中で、スマートシティ事業参画を目指していた事業者の取組みが減速していく可能性があります。同時に、新型コロナウイルス感染症対策に関する国や地方自治体の迅速な対応について、各地域住民の注目が集まっています。よりリアルタイム且つ正確な感染状況が知りたい、“私”が利用できる支援情報が緊急に分かりたい、新しい暮らし方・働き方・学び方を受け入れたい。このような一人一人のニーズにインタラクティブに応えていく、レスポンシブな行政サービスの実現が、今、切望されています。こうした行政機関の社会的機能の変革と、スマートシティ推進の取組みは、“デジタル・トランスフォーメーションによるユーザー(住民)の体験変容を起点とすることが必須である”という点で、重複すると筆者は考えます。地域住民の想いや環境に合わせてサービスを享受できるスマートシティと、だれ一人残さない社会を実現するためのデジタル・ガバメントと言う取組みは、双方が両輪となって初めて成り立つものである、ということです。私たちが目指そうとしていた未来の姿が、このコロナ問題を前提にすることにより、さらに鮮明になったのではないでしょうか。
本稿では、この、スマートシティとデジタル・ガバメントを繋ぐ扉を開くためのカギとは何か、を考察していきたいと思います。