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2022.02.15

2022年2月号 特集 サイロを乗りこえたデンマークのベース・レジストリが描く未来

デンマーク デジタル化庁
チーフコンサルタント
アダム・アーント

取材/増田 睦子(行政情報システム研究所)、狩野 英司(同)
文/原田 圭

 現在、日本では、国のデータ戦略の一環としてベース・レジストリの構築への取り組みを本格化させつつあるが、その意義やメリットは関係する行政機関や地方自治体の間で十分に理解されているとは言い難い。これに対し、デジタルガバメント先進国・デンマークでは、データ戦略とベース・レジストリの構築においても他国に先駆けて取り組みを進め、実際の効果を生み出してきている。デンマーク政府におけるデータ戦略の中心人物であるアダム・アーント氏に、彼らが取り組んできたベース・レジストリのプロジェクトについて話を聞いた。

 

デンマークにおけるベース・レジストリ構築の背景

- 日本政府では、デジタル庁立ち上げを契機として、データ戦略やベース・レジストリに関する検討が活発化してきています。ベース・レジストリとはそもそも何を指しているのでしょうか。
アダム・アーント(以下、A):EUにおけるベース・レジストリとは、社会における最も基本的なデータ群のことを指しています。個人や法人、不動産や場所など、公共に関わる情報の管理に必要なデータがそれにあたりますが、例えば、個人のデータならば、生年月日、国籍、性別、住所、親戚関係といった情報が登録されていますし、法人については、法人名、業種、設立年月日、住所、財務状況、経営陣といった情報が含まれています。