機関誌記事(記事単位)

2023.08.10

2023年8月号 特集 経済産業政策からみたWeb3.0の意義と「Web3.0政策推進室」が果たす役割

経済産業省
経済産業政策局 産業資金課長/大臣官房 Web3.0政策推進室長
浅野 大介

取材/狩野 英司(行政情報システム研究所)
文/森嶋 良子

 経済産業省では2022年7月、大臣官房に省内横断組織「Web3.0(ウェブスリー)政策推進室」を設置した。Web3.0を基盤としたビジネスの創出に向け、経済産業政策の新機軸のテーマとして位置付けながら、関係省庁とも連携しつつ様々な事業環境整備に取り組むことを目的とするという。

 Web3.0政策推進室長を務める浅野大介氏に、経済産業省がWeb3.0に着目した背景や取り組み内容、Web3.0が経済にもたらす影響、今後の可能性について話を聞いた。

1.若手の自主的な取り組みから始まったプロジェクト

- まず初めに、経済産業省のWeb3.0政策推進室を立ち上げた経緯をお聞かせください。
浅野:2021年の冬頃から経済産業省の若手が集まって、自主的に勉強会を進めていたところから始まります。20代後半から30代前半ぐらいまでの世代が自主的に、ブロックチェーンをベースにしたトークン経済がどのような可能性を持ちうるのかについて検討を行っていました。明らかになった課題として、世界の中でもとりわけ日本は、そのような新しい経済領域のビジネスをやりづらいということがあり、それらをまとめたペーパーを2022年の春に作成しました。
 時を同じくして、自民党内でもデジタル社会推進本部にNFT政策検討PTができ、「NFTホワイトペーパー(案)~Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略~」がまとまりました。ちょうど政治的にも機運が高まってきた時期だったわけです。経済産業省として政策の一つとして位置付けるべきだということになり、2022年の7月に、正式に大臣官房のプロジェクトチームとしてWeb3.0政策推進室が発足しました。Web3.0における暗号資産やトークンは、決済手段なのか証券なのかよくわからない、あいまいな経済領域を生み出しました。またその上にはコンテンツ産業やスポーツ産業が乗り、遠くまで見通せば地方創生やSociety5.0など多岐にわたって展開していきます。これをいったい誰が見るのかということになり、新たなチームを作ったほうがよいということになったのです。