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2022.10.17

「行政におけるローコード・ノーコード開発の課題と可能性」開催レポート

一般社団法人行政情報システム研究所
研究員 小池 千尋

本イベントの詳細レポートを、機関紙「行政&情報システム」2023年2月号に掲載いたしました。ぜひご一読ください!

「行政におけるローコード・ノーコード開発の課題と可能性」(AIS・一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構共催)を、2022105日(水)にオンライン開催しました。

AISと一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構では現在、行政がローコード・ノーコード開発に取り組むにあたっての課題や制約条件を明らかにするとともに、その解決の方向性および具体策を導出することを目的とした調査研究を行っています。
本イベントでは、調査研究の中間報告を行うと共に、ローコード開発の課題や可能性について考えることを目的として、行政の現場で実際にローコード・ノーコード開発に取り組んでいる行政機関やツール提供会社の方々を交えたパネルディスカッションを行いました。

 

当日の模様

ローコード開発を行政機関へ導入する現場の第一線で活躍されている方々の中で、ユーザ側である行政機関、またサービス提供側である提供会社の双方からお話を伺いました。

※動画の公開期間は終了いたしました。

 

開催内容
タイムテーブル

18:30~18:35 オープニング
18:35~18:50 調査研究中間報告
18:50~19:25 パネルディスカッション
         テーマ:「行政のDX推進に向けたローコード開発の役割」
          パネリスト:
           蒲原大輔氏(サイボウズ株式会社)
​           福迫礼人氏(日本マイクロソフト株式会社)
           木澤真澄氏(株式会社トラストバンク)
           武田竜大氏(新潟県長岡市)
           長谷部大輔氏(熊本県小国町)
           前川浩輝氏(経済産業省)
          モデレーター:高橋邦明氏(一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構
19:25~19:30 クロージング

 

(出演者)

調査研究中間報告

調査研究において実施したローコード開発の導入事例、導入失敗事例、リカバリ事例や製品に関する調査結果と、それにより明らかになったローコード開発の現状や課題を中間的に報告しました。ポイントを以下にご紹介します。

★ポイント

      • 府省庁・自治体共に導入が進んでいる
      • 導入ツールは、様々な環境に対応可能なものが多い
      • 自治体においては、アジャイル形式での導入も進みつつある
      • 導入の失敗を防ぐためには、調達に関するガイド作成、受注者に対する事前教育等の対応等も効果的である
パネルディスカッション

行政の現場で実際にローコード開発に取り組んでいる行政機関やツール提供会社の方々を交え、パネルディスカッションを行いました。議論の内容をAISにて一部抜粋し、ポイントを整理したものを以下にご紹介します。

Q1. ローコード開発を全庁への取組へと繋げるためには、どのような取組や工夫が必要か?
A1. 首長や庁内発信力の高い部署を巻き込む、職員が日常的にツールへ触れる機会を作る等、組織の中に取組を組み込んでいく必要がある。(主に行政機関からの意見)

Q2. 行政機関へのローコード開発導入においては、どのような推進体制が効果的か?
A2. 地道にコツコツものづくりをすることが好きなタイプの職員を間口広く募集する、庁内研修の参加者を各庁舎に配置し質問しやすい環境を整える等、デジタルに親和性の高い職員を現場に増やしていくことが有効と考えられる。(主に行政機関からの意見)

Q3. 行政機関へのローコード開発導入拡大に向け、提供会社は現在どのような工夫を行っているか?

A3. IT知識がなくても開発できるようなUIUXや業務テンプレートを整える、他自治体と成果物をシェアリングする文化を醸成する、開発に関することのみならず業務改革も同時に推進できるようなサポート体制を整える等、現場目線で職員に寄り添うための工夫を行っている。(主に提供会社からの意見)

Q4. 今後ローコード開発を導入する行政機関へのメッセージ
A4. 比較的低コストで始められるローコード開発は、行政機関にとってDXのきっかけづくりともなり得ると考えられる。一方で、ローコード開発はあくまで手段に過ぎない。ローコード開発によって行政機関が抱える全ての課題が解決できる訳ではないことを念頭に置きつつ、導入目的やスコープを明確化した上で導入を推進することが、今後重要となるだろう。(行政機関・提供会社双方からの意見)

後半で今後の展望について伺った際は、「他業務領域も自動化したい」「システムに集まったデータを他業務・他組織と連携させることにより、さらなる全庁DXを進めたい」等の声を聞くこともできました。ローコード開発が庁内DXのきっかけとなり、その後の取組拡大にも繋がっていることが伺えました。

 

まとめ

本イベントにおいて、行政機関においてもローコード開発の導入が広がりを見せている理由、導入にあたり生じ得る課題や解決策等を明らかにすることができました。特に全庁への普及にあたって、各行政機関の状況に応じて凝らした工夫の内容がとても印象的でした。小国町・長谷部さんの「開発作業はプラモデルを組み立てる過程に似ていると感じました」という言葉は、これからローコード開発に取り組もうとされている行政機関の担当者の方にとってイメージアップに繋がるのではないかと思います(実は、本イベント案内のトップ画像に掲載したレゴの画像は、長谷部さんの言葉から想起した「異なるパーツを組み合わせて一つの小さな完成形をつくる」という、ローコード開発の過程をイメージしたものです)。

また、業務テンプレートを作成することによりゼロベースで開発しなくても済むようにする、自治体同士の関係性を活用してシェアリング文化を醸成する等、行政機関特有の事情を踏まえたサービス提供に取り組まれている提供会社の方の努力も感じられました。サイボウズ・蒲原さんからは、「これからも全職員の武器を高めるために頑張っていきたいです」という、とても心強いお言葉をいただきました。

行政機関・提供会社の双方から挙がったのは、あくまでローコード開発の導入は手段であるということです。導入の取組をきっかけに業務改革を進め、DXを如何に推進するかが今後期待されそうです。

参加者の方からは、「ローコード開発ツールの利用者・提供者それぞれの視点で話を聞くことができた」「自治体DXに向けた取組に関するヒントをもらった」等の感想をお寄せいただきました。

おかげさまで「行政におけるローコード・ノーコード開発の課題と可能性」を無事終えることができました。今回の内容を十分に活かしつつ、調査研究を継続してまいります。

登壇者の皆様、アンケート調査にご協力いただいた提供会社の皆様、イベント参加者の皆様に改めて御礼申し上げます。

 

文:小池 千尋(一般社団法人行政情報システム研究所 研究員)

 

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