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2017.12.08

『行政&情報システム』2017年12月号連載 研究員コラム 行政情報化セミナー「第2回デジタル・ガバメント講座」開催報告

一般社団法人行政情報システム研究所
研究員 松岡 清志

当研究所主催の行政情報化セミナー「第2回デジタル・ガバメント講座」が921日~ 22日の2日間にわたって開催されました。

本年度は、5月のIT総合戦略本部における「デジタル・ガバメント推進方針」策定等の動向を踏まえつつ、我が国および諸外国の電子政府の政策や取組みに関して理解を深めることを目的として本講座を開催しました。今回はお申込された方の数が例年を大きく上回り、デジタル・ガバメントやサービスデザインへの関心が高まっていることが窺えました。(定員超過のため参加できなかった方には重ねてお詫び申し上げます。)

 講座概要

 

【期間】2017年9月21日(木)~ 22日(金)
【場所】霞が関ナレッジスクエア(東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート)
【受講者数】計36名
【講師】現役CIO補佐官3名、現役政府職員2名、元政府職員(現大学教授)1名、法人代表1名

コースの内容については表1に示したように、1日目の前半にデジタル・ガバメントの概念や、我が国および諸外国政府における取り組み状況を解説する講義が行われました。これらの講義内容を踏まえた上で、1日目の後半から2日目にかけては利用者中心の行政サービス改革を実現するためのアプローチとしてサービスデザイン思考を重点的に取り上げました。1日目の後半にサービスデザイン思考の概念に関する講義を行い、受講者に同概念についての理解を深めていただいたうえで、2日目には行政機関におけるサービスデザイン思考のアプローチに沿った事例紹介を行いました。

表1 「第2回デジタル・ガバメント講座」カリキュラム

さらに、最後の討論会ではデジタル化、データ活用、デザイン思考の3つの「D」を今後行政の現場で進めていく上での課題や、これらに影響を及ぼす組織文化の壁について、登壇者の知識や経験を踏まえてのディスカッションが行われました。また、受講者との間でも活発な質疑応答が交わされました。

写真 討論会の様子

これらの講義や討論会を通じて、受講者からは、「今までは耳にしたことがある程度であったサービスデザインの中身について、より明確に把握できた」「真の利用者の見極めやホリスティックな視点でのサービス設計の重要性を理解できた」「公開されている情報からでは分からない課題を認識することができた」といった感想が寄せられました。本講座内で紹介したデジタル・ガバメントやサービスデザインといった概念は今後の行政運営において大きな軸になるものと考えます。当研究所では、これらの潮流に引き続き注目し、セミナーや雑誌、ウェブサイトなどを通じて今後も情報発信を行ってまいります。

最後になりましたが、2日間の講座を監修いただいた東京大学公共政策大学院 奥村客員教授、各講義をご担当いただいた講師各位、そして受講者の皆様に改めて御礼申し上げます。

 

<東京大学公共政策大学院 奥村客員教授のコメント>

昨年度から始まっている「デジタル・ガバメント講座」ですが、今年はその二回目を迎えて、デジタル・ガバメントの実現に不可欠な徹底したユーザーエクスペリエンスを着実に実行に移すべく、今回はサービスデザインの本質(デザイン思考)や実践事例を取り入れました。

参考までにデザイン思考から出てくる取り組み方は次の通りです。皆さんもぜひ実践してみてください。そして自身の組織にあったやり方を工夫してみてください。

①企画段階から実施までを視野に入れた政策を検討すること

②ユーザーの視点に立って徹底的に政策のアイデアを考えること

③ユーザーの表面的なニーズにとらわれずその裏にある本当の課題に迫ること

<ユーザー目線②、③と供給者目線④、⑤は峻別して取組むこと>

④政策提供者の立場で、その政策アイデアで財源や実施体制の課題をつぶしていくこと

⑤その際、行政内の組織の壁や市民との壁を越えた協働や対応に果敢に取り組むこと

⑥その政策が必要な理由の説明には、裏付けとなる根拠データを組み入れること

⑦根拠データには統計などの事実データと人間行動の背景がわかる定性的な厚いデータを使うこと

⑧政策の素案をユーザーと繰り返して試しながらそれを修正していくこと