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2019.04.10

2019年04月号連載 研究員コラム 行政情報化セミナー「第3回デジタル・ガバメント講座」開催報告

一般社団法人行政情報システム研究所
研究員 松岡 清志

当研究所主催の行政情報化セミナー「第3回デジタル・ガバメント講座」が27日~ 8日の2日間にわたって開催されました。

本年度は、最新事例を交え我が国及び諸外国のデジタル・ガバメントの動向や課題を理解することと、またワークショップを通じ、課題を深く理解し将来の展望を共有することを目的として本講座を開催しました。前回に引き続き、今回も早々に多くの方からお申込頂き、デジタル・ガバメントやサービスデザインへの関心が高まっていることが窺えました。

講座概要

【期間】2019年2月7日(木)~ 8日(金)
【場所】霞が関ナレッジスクエア(東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート)
【受講者数】計30名
【講師】現役CIO補佐官2名、現役政府職員3名、元政府職員(現大学教授)1名、デジタル領域専門家5名

 

コースの内容については表1に示したように、1日目の前半にデジタル・ガバメントに関する我が国の戦略、取組状況、具体的な事例および諸外国政府における取組み状況について、政府職員やCIO補佐官が解説する講義を行いました。今年度はグラフィックレコーディングを用いてリアルタイムで講義内容の可視化を行い、2日目のワークショップに向け参加者が課題の共有をする手助けとしました(写真1)。1日目の後半には「行政におけるデジタル変革のこれから」として、民間企業においてデジタル変革に取り組まれている方々のプレゼンテーション、及び今後のデジタル変革の方向性に関する鼎談を行いました(写真2)。鼎談では、デジタル変革を進めるポイントとして、本来の目的の明確化、トップの牽引、情報・ノウハウ・小さな成功の共有が挙げられました。

2日目は、2030年のデジタル・ガバメントの姿について、デザイン思考で考えるワークショップを行いました。その際の手法として、LEGO®シリアスプレイ®LSP)メソッドを用いました。LSPは、各人の考えをLEGO®ブロックで作品を創って可視化し、その作品を言葉で説明したり質問を受けたりすることで、他者と考えを共有しながらストーリーをつくりあげる共創の手法です。最初は一定の時間内にブロックを組み立て、思いや考えを表現することに苦戦していた参加者も、アイスブレークが進むにつれ同じチーム内でのコミュニケーションが次第に活発になり、チームのメンバーそれぞれの作品を結びつけて最終的に2030年のデジタル・ガバメントの姿をプレゼンテーションするに至りました(写真3)。

これらの講義や鼎談、ワークショップを通じて、受講者からは、「デジタル・ガバメントを自分事として捉え、新たな気づきがあった」、「公開されている情報からでは把握できない状況や課題を認識することができた」、「デジタル変革に関して政府と民間の共通点と違いを認識することができた」、「情報や知見を得られただけでなく、ワークショップを通じて実感することができた」といった感想が寄せられました。

本講座内で紹介したデジタル・ガバメントの推進におけるデザイン思考といった概念や実際の手法は、今後の行政運営において大きな軸になるものと考えます。当研究所では、これらの潮流を引き続き注目し、セミナーや雑誌、ウェブサイトなどを通じて今後も情報発信を行ってまいります。

最後になりましたが、2日間の講座を監修いただいた東京大学公共政策大学院 奥村客員教授、各講義をご担当いただいた講師各位、そして受講者の皆様に改めて御礼申し上げます。

表1 「第2回デジタル・ガバメント講座」カリキュラム

 

写真1 グラフィックレコーディングによる講座の可視化

 

グラフィックレコーディング:成田富男氏

写真2 鼎談の様子

 

写真3 参加者がLEGOⓇで表現した2030年のデジタル・ガバメントのイメージ