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2018.10.18

2018年度海外調査を実施しました

当研究所では、海外の電子政府の先進的な取り組みを調査し、日本における電子政府推進に役立つ知見を得ることを目的として、
会員企業との協働による海外調査を1年に1回実施しています。

本年度は、調査先としてカナダおよびアメリカを選定し、10/15(月)から10/24(水)までの日程で調査を実施いたします。
訪問先は以下の通りです。
・カナダ保健医療福祉標準化機構(HSO)
・カナダ政府CIOおよびカナディアンデジタルサービス(CDS)
・アメリカスクラム社(Scrum.Inc)
・ホワイトハウスでデジタル改革に携わった経験を持つトーマス・コクラン(Thomas Cochran)氏
・アメリカ政府エネルギー省(DoE)

調査に参加している研究員より、調査内容について報告が寄せられていますので、以下に掲載します。

・10月16日

現地時間16日にカナダ保健医療福祉標準化機構HSO(Health Standard Organization)を訪問しました。
HSOにてCDO(Chief Digital Officer)を務めるAmy Yee氏をはじめとした、デジタル改革に従事されている方々からこれまでの経験および今後の展望についてお話しいただき、ディスカッション、意見交換を行いました。
昼食を共にしてのディスカッションでは、日本とカナダのITに関する現状を紹介しあうシーンもあり、およそ4時間のセッションは盛況となりました。

HSOでは、スクラム手法に基づくデイリースタンドアップを実践されているということでその様子も拝見しました。その流れでAmy氏がおっしゃったDesign Thinking+Agile + Digitalという言葉が印象的でした。日本ではこれから取り組みが進んでいくことが予想される分野ですが、先進事例での取り組みを実際に拝見する中で、日本における導入にあたってのメリットや課題などについて考察するよい機会となりました。

 

・10月17日

17日はカナダ政府を訪問しました。
カナダ政府CIOであるAlex Benay氏、カナディアンデジタルサービス(CDS)のPascale Elvas氏、John Millons氏によるプレゼンテーションを拝聴し、その後ディスカッションを行いました。
プレゼンテーションでは、現在カナダ政府として取り組んでいるデジタル改革およびそれを達成するために大切にしている方針について主にお話しいただきました。

政府機関の中でデジタル改革に取り組まれている方のお話はいずれも情熱に満ち溢れていており、使命感を持って改革に取り組まれていることが伝わってきました。
カナダ政府におけるITプロジェクトの失敗談のお話もあったのですが、その失敗を生かして改革に取り組まれているとのことで、現状や失敗の分析をしっかり行うことの大切さを改めて感じました。(TM)

・10月19日

19日は、アメリカ・ボストンにあるスクラム社(Surum.Inc)を訪問しました。
スクラム社は、アジャイル型開発手法の中でも最も著名なスクラム手法を推進・普及している会社で、世界でデジタルトランスフォーメーションを進める政府機関や企業を支援しています。
今回の訪問では、アジャイル型開発手法の行政への導入のあり方をテーマに意見交換を行いました。同社社長のJoe Justice氏、Transformation Service担当部長のSean Hafferty氏、スクラムマスターのJessica Jagoditsh氏からスクラム手法についての考え方や進めるうえでのポイントについて、プレゼンテーションを受け、活発なディスカッションを行いました。
その中では、特に公的機関における契約や調達といった踏み込んだ課題について熱心な議論が交わされ、スクラム手法がいかに大きな変化を企業や行政機関にもたらす可能性があるか、また、行政機関でも十分に成果が得られていることを理解することができました。日本で今まで行われた業務のやり方・発想からは離れる必要がある部分もJoe氏から多く語られ、新しい手法の取り入れに際して行政機関で実施されている契約や調達の在り方を見直すことの大切さを改めて実感しました。(TM)

・10月22日午前

22日午前中は、Thomas Cochran氏をお招きしてのプレゼンテーションおよびディスカッションでした。
Cochran氏は、米国ホワイトハウスや国務省にてデジタル改革をリードされてきた実績をお持ちで、現在はコンサルタントとして活躍されています。
今回は、「オバマ政権時代に取り組んだ改革」と、「データ戦略」の2つのテーマでお話しいただきましたが、共通して強調されていたのが
、プロジェクトを成功させるためには人を大切にすることが大事だということでした。
プロジェクト中はチームメンバーとの面談やランチをこなし、自分が上司ではなく仲間としてプロジェクトに着任したことを理解してもらうようにしていたそうです。
IT関係のプロジェクトですと、ついついテクノロジーの話を先にしてしまいがちですが、
Cochran氏はご自身の体験から、いかに人、そしてチームの文化・土壌が大事かを実感しているとのことでした。
日本においてもチームビルディングの重要性がしばしば言われていますが、普段の仕事をこなしながらそれを意識するのは大変な側面もあります。私自身あたらめてチームとはなにかを考えるきっかけとなりました。(TM)

・10月22日午後

22日午後は、米国政府エネルギー省のサイバーセキュリティ、エネルギー安全保障および緊急事態対応担当次官補を務めるKaren Evans氏をはじめとしたメンバーとのディスカッションを行いました。
Karen氏は以前アメリカ政府のCIOを務めた経験をお持ちで、その後はサイバーセキュリティ関係に活動の軸を移されていました。
自然災害からサイバー攻撃まで、重要インフラに関するありとあらゆる危機に対する対策をとることをミッションとしているチームということもあり、ディスカッションのテーマは行政における災害時・緊急時対応の中でのサイバーセキュリティが中心となりました。
ここでキーワードとしてよく出ていた言葉が民間との協働です。
アメリカにおいても電力などのインフラの運営主体はほとんどが民間企業となっており、危機管理において民間企業と連携することが欠かせない一方で、「どのようなインセンティブを民間に与えつつ協調していくか」という視点を重視して施策に取り組まれているそうです。官民協働はいろんな分野で叫ばれていますが、具体的なインセンティブに施策・政策として踏み込んでいる点が印象的でした。(TM)