機関誌記事(記事単位)

2018.08.10

2018年08月号特集 ブロックチェーンも変わるし「公共」も変わる

慶應義塾大学SFC研究所 上席所員
環境情報学部 講師(非常勤)
斉藤 賢爾

1.はじめに

読者のみなさんは「ブロックチェーン」という言葉を聞いたとき、どんなことを思い浮かべるだろうか。金融に関するイメージが多いだろうとは想像できる。ブロックチェーンが、ビットコインというデジタル通貨を成り立たせるために発明されたことには間違いない。

金融も通貨も公共のものであり、お金は私有されるというよりも公共財である。お金が公共財だということは、例えば500円玉を本当に私有できるのであれば、溶かすなりして、自分で処分しても誰にも怒られないはずだが、そうではないということからも明らかだろう。そして、ブロックチェーンは公共財を扱うことに適しているように作られている。ただ、技術的、そして技術ガバナンス的な課題が非常に多く、そのままでは使えないのではないかと筆者は思っている。ブロックチェーンは変わる必要があり、筆者は仲間らとともにそのことを実際に行う「ビヨンドブロックチェーン」の活動を続け、先頃Beyond Blockchain One BBc-1) の最初の製品版をオープンソースで (すなわち公共のものとして) リリースした。だが、その話は別の機会に譲ろう。