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2020.02.10

2020年2月号連載企画 CIO補佐官オピニオン No.3 デジタルデバイドだけじゃない<後編> 〜公共財としての行政サービス〜

内閣官房IT総合戦略室
政府CIO補佐官 伊藤 豪一

前回は、新しい行政サービスの方向性として、オーダーメイドの行政サービスについて述べました。「いま」「ここで」「わたしが」「必要とする」行政サービスを「適切な方法で」提供する。そのためには、データドリブンを前提としたサービス設計とデータ連携が不可欠です。今回は、デジタル化の先にある行政サービスのあり方について考えていきたいと思います。

1. デジタル・ガバメントにおける公共財としての行政サービス

Society 5.0(※1)でも議論されている通り、デジタル化が進展した社会では、CPS(Cyber Physical System)、IoT(Internet of Things)によりデジタル世界とアナログ世界がそれぞれ連携・融合し、質の高い生活を営むことのできる人間中心の社会が実現します。オンラインとオフラインが互いに連携してサービスを提供する、O2O(Off Line to On Line)の世界から、オンラインサービスの一構成要素としてオフラインが内在する、いわゆるOMO
(On Line Merges with Off Line)の世界が実現していくと考えられます。
行政分野でもデジタル変革がさらに進展することで、行政サービスが、個人や企業活動から独立したものではなく個人や企業活動のライフサイクルに溶け込んだ形で、サービス提供されるようになります。さらに、個人や企業は、サービス主体が行政であるか民間であるかを意識することなく、自らが望むサービスを受けるようになると考えられます。
(※1)Society5.0 : サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。