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2020.06.10

2020年06月号連載企画 人間中心の情報システム No.1 人びとを幸せにするIoT×FinTechイノベーション GMS、モビリティ分野で貧困・低所得層にもローン利用を支援

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
主幹研究員 砂田 薫

1.連載を始めるにあたって

AIやロボットの支配・監視下にあるのではなく一人ひとりの人間が中心となる社会、誰もが快適で質の高い生活を送ることができる人間中心の社会、経済発展と社会課題の解決が両立する社会――これが日本政府の描く近未来の社会「Society5.0」のイメージである。ここでキーワードとなっている「人間中心」という概念は、言うまでもなく、人間にとって都合がよければ他の生物や地球環境を犠牲にしてもよいという意味を含む「人間中心(人類中心)」の考え方すなわち人間(人類)至上主義とは一線を画している。
人とテクノロジーの関係を語る時に「人間中心」という概念をいち早く提唱したのは浦昭二・慶應義塾大学名誉教授(1927-2012)である。浦先生は、今から30年ほど前に「人間中心の情報システム(Human-oriented Information Systems)」という言葉で、人を中心に情報システムのあり方を考える重要性を主張した。情報システムとは企業組織のコンピュータシステムを指すと思われていた時代に(今でもそういう傾向はあるが)、技術・機械系だけではなく、人・組織・社会といった人間系も含むシステムとして捉え直し、新たな情報システム学の創生に尽力した。浦先生の主導によって2005年に発足した情報システム学会は、「人間中心の情報システム」を重要な概念として掲げているが、その定義を厳密に定めているわけではなく、今日でも多義性を残したまま研究と議論を続けている。とはいえ、学会員の間では、人間の情報行動と関わり“人間と調和がとれている”、“経済的のみならず社会的・倫理的にも価値がある”といった点を考慮する傾向がみられるのは確かである。