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2020.06.10

2020年06月号連載企画 行政情報化新時代 No.53 危機におけるICTとその未来

杏林大学総合政策学部
教授 木暮 健太郎

1.はじめに

未曽有の事態とは、まさにこの状況を表すためにあるような言葉である。ここまで深刻な影響をもたらし、私たちの日常生活に直接的で長期的なダメージを与えるとは、おそらく、多くの人が想像できなかっただろう。新型コロナウイルスの猛威が全世界を覆いつくす様子は、まるでパニック映画のワンシーンかのようだ。しかし、この恐怖は「リアル」である。
未知であり、かつ「見えない」相手に対して、どう行動するのか、何を選択するのか。そして大げさに言えば、どのような未来を望むのか。いま、わたしたち一人一人に、極めて鋭く問われ続けていると言えるのかもしれない。
そして、この危機的状況において、かつてないほど、ICTが注目されることになった。いわゆる「ソーシャル・ディスタンス」という行動様式が新しい社会的なスタンダードとなるなかで、遠隔でのコミュニケーションを可能とするICTの役割に対して、さらなる期待が高まっている。とりわけ、仕事や教育といった生活の重要な場面はもちろん、今後の医療においても、その重要性や必要性が改めて認識されている。今こそ、改めてICTが生み出す可能性について、幅広く議論すべき時期でもあるだろう。
はからずも、筆者が10年近く続けてきたこの連載の最終回として、極めて大きなテーマに向き合うこととなった。政治や行政はもちろん、大学という教育の現場が直面している課題にも言及しながら、本稿をまとめていきたい。