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2020.10.09

2020年10月号連載企画 人間中心の情報システム No.2 学習者中心に進む学校のデジタル変革~フィンランド・カサヴィオリ校と北海道教育大学附属函館中学校の実践~

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
主幹研究員 砂田 薫

1.はじめに

デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション:DX)が課題となっているのは行政機関や企業にとどまらない。新型コロナウィルスへの対応でオンライン学習の導入が試みられ始めた日本の学校教育においても重要かつ緊急性の高い課題となっている。
教育情報化の先進国では学習者一人1台の端末整備が必須と受け止められている。というのは、批判的思考力、コミュニケーション能力、コラボレーション能力、自立的に学習する力といった、いわゆる「21世紀型スキル」に対応した改訂版カリキュラムのもとでは、ICTが重要な学習インフラとなるためだ。世界の中でも早くから学校教育で積極的にICTを活用してきた国の一つがフィンランドである。とくに、2013年9月に当時の新藤義孝総務大臣が視察したカウニアイネン市カサヴィオリ校(Kasavuori School)は、「学習者中心」のコンセプトでデジタル変革の先駆的な取り組みを行ってきた。
一方、日本は長年にわたって学校におけるICT活用が進まなかった。日本の遅れを解決すべく、文部科学省は2019年12月、小中学生に一人1台の端末を配備し、学校に高速大容量の通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」を発表した。2020年7月には日本経済団体連合会が「Society5.0に向けて求められる初等中等教育改革第一次提言~ withコロナ時代の教育に求められる取り組み~」を公表し、GIGAスクール構想の前倒しの実施を求めた。このように国も経済界も義務教育におけるICT活用を加速させようとしているが、多くの学校現場はこの急な動きに戸惑いを感じているのが現状である。