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2021.02.10

2021年2月号連載企画 人間中心の情報システム No.3 ユマニチュード×AIで人間らしいケアへ~本人・家族・介護者を支援するエクサウィザーズのケアテック~

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
主幹研究員 砂田 薫

1.はじめに

世界で最も高齢化が進む日本では、65歳以上が3,617万人と総人口の3割近くを占めている。それにともないケアを受ける人の数も年々増加、2019年3月末時点での要支援・要介護認定者数は658万人(対前年比2.6%増)に達した。介護が必要になった原因のトップが認知症だ。とくに平均寿命の長い女性は要介護認定者数が多いうえ、認知症が原因となった人が2割にのぼる。一方で、ケアを担う人材の不足はますます深刻な問題となっており、経済産業省は2030年には79万人が不足するという試算を2018年に公表した。
人材不足をはじめとする介護現場の諸課題を解決するために、近年、ケアテックへの関心が急速に高まってきた。ケアテックとは、介護(care)とテクノロジー(technology)を組み合わせた造語で、施設や在宅でのケアの質向上や業務の効率化を目的に、AIやIoTなどを活用することを指す。ケアテック製品・サービスの市場には大企業だけでなくベンチャーの参入も活発になっている。とはいえ、現在はまだ研究開発や実証実験、一部の試験的導入という段階にある。ケアを受ける人にとってもケアをする人にとっても、より望ましい方向へと現状を変えていくためにテクノロジーをいかに使うべきなのか。その合意が形成されているわけではない。
本稿では、まずケアの基本となる考え方を概観したうえで、ケアテック製品・サービスで実績を持つベンチャー、株式会社エクサウィザーズの取り組みを紹介する。そして、同社の事例を通じて、人間中心の情報システムという観点からケア領域における人とテクノロジーの関係について考察したい。