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2018.12.10

2018年12月号連載企画 行政情報化新時代 No.45 「情報銀行」はどのように成立するか

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
准教授 庄司 昌彦

1.利用者の立場から持続可能な情報銀行を考える

官民問わず、データ活用についての議論が盛んに行われている。その中で特に分野横断的に関心が高いのが、「情報銀行」に代表される、パーソナルデータ活用に関する議論である。
情報銀行とは、個人が健康状態や位置情報、購買履歴、学習履歴をはじめとする自分に関するデータをPDS(パーソナル・データ・ストア)などと呼ばれる集積場所(ネット上のサービス等)に集約し、また必要に応じて情報を外部に開示するなどして、適切な管理と活用をしていくというものである。個人に関するデータは自分自身で扱えるべきであるという自己情報コントロール権の考え方に立脚している。情報銀行は、個人情報を財物のように扱い、幅広い個人情報を集約し整理・分析し、活用していこうという取り組みの要になると期待されている。
しかし、情報銀行については、企業が個人情報を入手しビジネスに活用しやすくなるという面に注目が集まっており、またそのことに対する消費者としての警戒感に基づく否定的な捉え方が少なくない。10月19日に総務省が開催した情報銀行の事業者認定に関する説明会でも、総務省から「お金につられてデータを提供するのでは本末転倒」という注意が喚起された。「パーソナルデータをお金に変える」という面だけで捉えていては、情報銀行という仕組みが普及することは難しいのではないかと考えられる。