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2019.08.09

2019年08月号連載企画 行政情報化新時代 No.49 パーソナルデータの進め方

武蔵大学 社会学部
教授 庄司 昌彦

1.行政とパーソナルデータ活用

今回も、データ活用のあり方について考える。データ活用の進め方は、パーソナルデータ(個人に関するデータ)を使うものと使わないものとで大きく異なる。行政においてもビジネスにおいても、健康に関するデータや購買履歴・趣味嗜好に関するデータといったパーソナルデータの分析を元に個人の特徴を把握し、各個人に適応したサービス提案などの施策を行うことによって、より大きな効果を生み出すことができると期待されている。
だが、パーソナルデータを扱うことはその効果への期待が大きい反面、個人情報保護の観点からより慎重な運用が求められる。パーソナルデータを活用する施策にとって、個人情報保護は制約条件であり、また批判を受けたりトラブルが起こったりするリスク要因でもある。そこで今回は、筆者が調査に参加した内閣官房IT総合戦略室の「我が国におけるデータ活用に関する意識調査」の結果iをもとに、利用者に受け入れられるパーソナルデータ活用のあり方を考えたい。
このアンケート調査の目的は、国内の一般的な消費者について、データ流通に関するさまざまな新サービスの潜在的なニーズや社会的な受容性について検証するということである。具体的には、PDS
(Personal Data Store)・情報銀行といったパーソナルデータを活用する新しい仕組みの可能性、具体的なパーソナルデータ活用サービスのユースケースへの期待、懸念や不安の内容などを探った。調査規模は全国の18 ~ 69歳の男女1,000人をエリアと性別、年代で実際の人口構成比に合わせて割りつけ、35問について回答を得た。
本論に入る前に簡単に概要をまとめる。PDS・情報銀行については、まだ認知度が低く、名前だけでなく内容まで認知している人は10%未満であった。しかし内容を説明すると、利用意向は2割程度
まで上昇した。またPDS・情報銀行以外のさまざまな分野のパーソナルデータ活用サービスを具体的に例示して利用意向を質問したところ、PDS・情報銀行よりも高い値を示した(2.1.)。このことか
ら回答者はパーソナルデータの利用について全面的に拒否しているわけではないことが示唆された。特に、医療や交通、新サービスのプロモーションであれば、4割程度の人が利用意向を示した(2.2.)。
また、パーソナルデータ活用サービスの利用意向がある人々は比較的年代が若い男性であることや、逆にインターネットや情報技術への親和性が低く、恐怖感を持つような人々は高齢の女性に多いことなども明らかになった(2.3.)。また、人々はパーソナルデータ活用サービスについて、プライバシーの保護、データの流出や悪用がないことを最も気にしているということも明らかになった。そして8割以上の人々が自分で情報を管理したいと考え、しかし5割の人々は管理するのは煩わしいとも考えていた(2.4.)。以下ではこの調査結果を詳しく紹介し、最後にこの結果を踏まえてパーソナルデータ活用の進め方についての考察を述べたい。

(※1)IT総合戦略本部が開催した第6回官民データ活用推進基本計画実行委員会 データ流通・活用ワーキンググループ(2019年3月4日)で報告した。資料はインターネット上で公開されている。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/detakatuyo_wg/dai6/gijisidai.html