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2022.06.10

2022年6月号 特集 デンマーク政府が描く、公共とデザインの未来

デンマークデザインセンター
CEO
クリスチャン・ベイソン

KESIKI Inc.
Partner Design Innovation 石川 俊祐

 デンマークは、世界の中でも行政におけるデザインアプローチに関して、先進モデルの一つとされている国である。同国でこうした取り組みをリードしてきたのが、2007年から2014年にかけて政府のクリエイティブ・ハブとして設立されたMindLabの代表を務め、現在はデンマークデザインセンターのCEOを務めるクリスチャン・ベイソン氏である。
 デンマークでは行政府でのデザインに関しどのような課題認識を持ち、どのような取り組みを展開してきたのか。そこから日本が学べることは何なのか。経済産業省や特許庁、自治体など、我が国の行政機関においてデザインアプローチ導入の豊富な支援経験を持つKESIKI Inc.の石川俊祐氏が、ベイソン氏に聞いた。

 

1.行政府にとってのデザインアプローチの有効性

石川俊祐(I):デンマークでは、政府のポリシーデザインから市民のウェルビーイングまで、幅広い文脈でデザインのアプローチが導入されています。なぜ、行政府や公共部門においてデザインのアプローチは有効なのでしょうか?

クリスチャン・ベイソン(B):私たちはこれまで行政サービスについて、選挙によって選ばれた政治家が官僚に指示を出し、その後何らかのかたちで行政府から市民に対して提供されるという一連のプロセスによって実現するものだと考えてきました。しかし、社会が複雑化するとともに市民のニーズも多様化し、多くの市民がテクノロジーやデジタルツールを利用できるようになる中で従来とは異なる政策立案や公共サービスの設計・運営方法の必要性が生まれています。