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2023.06.10

2023年6月号 連載企画 イノベーションのためのサービスデザイン no.16 特許庁 I-OPENプロジェクト

株式会社コンセント 代表/武蔵野美術大学 教授/
Service Design Network 日本支部 共同代表
長谷川 敦士

 本連載の記念すべき第1回で取り上げた「デザイン経営」宣言を発表した特許庁は、実際に庁内でデザイン経営の実践活動を展開し、そこで生まれた事業が「I-OPENプロジェクト1」として現在進行している。今回、このI-OPENプロジェクトを取り上げ、その成功している要因を紹介する。

1 I-OPEN https://www.i-open.go.jp/

 

1.「デザイン経営」宣言からI-OPENプロジェクトへ

 I-OPENプロジェクトとは、様々な社会課題の解決に取り組むスタートアップ、非営利法人や個人事業主を「I-OPENER」と定義し、このI-OPENERと知財やビジネスに精通した専門家の「サポーター」とが一つのチームになって、共に考え、行動し、知的財産を活用しながら社会課題を解決できるようにする伴走支援プログラムである。
 内容としては、I-OPENERのアイデアに対して、専門家がメンタリングし、それぞれが取り組む社会課題に対する想いや強みを再確認する過程を経て、知財戦略、ブランディング、成長戦略などを検討する。I-OPENプロジェクトは特許庁の事業として実施されているが、直接的に特許出願数を増やすことを目標とするのではなく、その手前の2021年に制定した特許庁のミッションである「「知」が尊重され、一人ひとりが創造力を発揮したくなる社会を実現する」ことを目的に、「創造力を発揮しようとしている人をサポートし、社会課題を解決する」ことを目標としているプロジェクトであると言える。