1.はじめに
政府が、2014年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、「地方創生」に関する取組が本格的に始動してから10年を迎えました。これまで、政府は地方自治体による施策の実施や地域の担い手が実施する地方創生の取組を、「情報面から支援」する取組として、2015年から「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」を公開してきました。RESASは、官民のビッグデータを用いて地域経済の現状を可視化するシステムであり、多くの政策現場や経営現場で、地方公共団体をはじめ、企業や教育機関など幅広い主体に活用されています。
政策立案・実行の現場では、データ分析等に係る専門知識を有する人材の不足や分析にかけることのできる時間が不足している状況下で、より精緻な分析や迅速な判断が求められています。こうした状況の中、内閣官房/内閣府は、2024年に、新たに「地方創生データ分析評価プラットフォーム(RAIDA:レイダ)」の提供を開始しました。RAIDAの一機能として、生成AIを活用したデータ分析支援機能である「RAIDA-AI」を2024年12月にリリースし、これまで自治体限定で「人口減少対策」をテーマとしたβ版を公開してきました。今般、2026年3月に「人口減少対策」と「観光」をテーマに、「RAIDA-AI」の一般公開を開始しました。RAIDA-AIは、人口減少をはじめとする、様々な地域が抱える重要な政策テーマについて、グラフ描画のみならず、一定の政策の型に基づくデータ解釈、地域の課題の示唆までを自動で提示する機能を備えています。
本稿では、RESASおよびRAIDAのこれまでの取組を踏まえつつ、特に生成AIを活用した「RAIDA-AI」が自治体の政策形成をどのように変えていくのか、「人口減少対策」に関する分析を中心にその概要をご紹介します。
2.地域のデータ利活用支援の歩みと課題
「地方創生」が本格始動した2014年から、政府は地方自治体等による地方創生の取組を支援するために、「ヒト」、「カネ」に並ぶ3本柱の一つとして、「情報」の支援を掲げ、RESASの開発をはじめ、データに基づく政策立案を支える仕組みづくりに取り組んできました。RESASは、「KKO(勘と経験と思い込み)」に基づく政策意思決定から、データやエビデンスに基づく客観的かつ戦略的な政策意思決定に転換するために、開発されました。RESASは、人口・産業・観光など幅広い分野の官民データを、「誰でも」「無償で」「直感的に」可視化できる仕組みであり、地方公共団体、企業、教育機関など多様な主体に活用されてきました。これに加えて、内閣官房/内閣府では、RESASを活用したデータ分析や政策立案を地域の担い手に、利活用、定着させるために、全国の地方支分部局にRESAS調査員を配置し、RESAS調査員による出前講座や政策立案ワークショップ等を通じた、普及・促進活動も実施してきました。
この10年の普及・促進活動の中で成果と課題がありました。人口減少問題のような多くの地域が抱える共通課題について、政策立案ワークショップ等を通じて、人口減少問題のロジックモデルや分析のフレームワークを構築し、地域の人口減少問題の原因やボトルネックの把握ができるようになってきました。具体的には人口動態には、出生や死亡等に起因する自然増減と、引っ越し等の人の移動に起因する社会増減の2要素があり、どの年代の流入・流出が多いのか、自然増減に影響を与える出産・子育て世代の構成はどうなっているのかを、データを基に分析することで、人口減少問題の原因やボトルネックを特定することができます。こうした分析を通じて、将来人口や将来の人口構成の改善に向けて、どのようなターゲットに対して、どのような行動変容を促す施策を実施すべきなのか等、どのような政策を講じるべきか議論をスタートすることができ、ワークショップではこうした現状認識や課題、ボトルネックの特定に係るデータ分析を起点に議論を進めてきました。政策立案ワークショップ等で分析のフレームワークやロジックモデル等を構築することができたのは一つの成果です。
他方で、自治体のアンケートやこれまでの研修実績を踏まえると、多くの自治体、特に町村では、こうした政策立案の型や分析手法について、十分な知見がないことや、分析をする十分な時間がないことが課題であることもわかってきました。せっかく、分析のフレームワークやロジックモデルができても、肝心の分析をする者や政策立案をする者に時間も知見もないということが課題でした。
このように、10年間の取組により、地域が抱える課題に対する政策分析のロジックモデルが整ってきた中で、知見・時間不足の地方公共団体の皆様が、効果的かつ効率的に分析をできるようにという思想で生まれたのが、「RAIDA-AI」をはじめとした、RAIDAの様々な機能です。特に、RAIDA-AIは、政策立案ワークショップ等で培った、分析のフレームワークやロジックモデルを駆使して、「ボタン一つでサクッと分析」ができて、データの可視化に留まらず、生成AIが分析結果や優先的に取り組むべき地域課題を文章形式で表示することができるため、時間も知見もない自治体の職員にこそ、是非活用いただきたいツールです。
図1 地方創生データ分析評価プラットフォーム(RAIDA:レイダ)と地域経済分析システム(RESAS:リーサス)の概要
(出典)著者提供
