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2026.09.01

2026年9月号 連載企画 「公共AIナレッジベース仕様Ver.1.0」について ~AIに「正しい情報」を確実に渡すための共通ルール~

横浜市 最高情報統括責任者(CIO)補佐監/行政情報システム研究所 客員研究員/公共AIナレッジ研究会 運営委員長/愛媛県CAIO補佐官/芝浦工業大学客員教授/グラビス・アーキテクツ株式会社 プリンシパル・アーキテクト
福田 次郎

5.第3の柱:5つのIDによるバージョン管理

 第3の柱がID体系である。要点は、ナレッジの「内容(コンテンツ)」と「属性(メタデータ)」を厳密に区別することにある。本文を改訂したのか、有効期限や公開設定だけを変えたのか。この2つは実務上まったく意味が異なるのに、通常のファイル管理では区別できない。そこで5つのIDを定義した(図表6)。

 

図表6 5つのIDの構造と形式

(出典)公共AIナレッジ研究会「公共AIナレッジベース仕様Ver.1.0」をもとに筆者作成

 

 ①ナレッジID(KID)は、ナレッジのテーマを一意に特定する不変の背番号である。「KID-YYYYMMDD-NNNNNNNN」で表し、内容が更新されてもIDは変わらない。一度採番したIDの変更・再利用は禁止する。
 ②ナレッジバージョンID(KVer)は本文の版数である。初版を1.0とし、軽微な修正でマイナーを+1、ルール変更など大幅な変更でメジャーを+1とする。単調増加とし、ロールバックは認めない。管理主体はオーナーである。③メタバージョンID(MVer)は、有効期限や公開設定などメタデータのみを更新した際の版数で、整数で採番し、管理主体はホルダーである。④コンテンツID(CID)はKIDとKVerを連結して自動生成される複合IDで、「どのナレッジの、どの版の内容か」を特定する。⑤レコードID(RID)はCIDとMVerを連結した、データベース上の唯一無二の最小単位である。
 具体例で示そう。2026年4月1日に登録した1件目のナレッジは「KID-20260401-00000001」となり、初版のRIDは「KID-20260401-00000001-1.0-1」である。メタデータの有効期限だけを延長した場合、本文は変わらないのでKVerは1.0のまま、MVerが2となりRIDの末尾は「1.0-2」となる。マニュアルを大改訂すればKVerが2.0となり、新しいCIDが生成される。
 この分離が効いてくるのは運用の場面である。AIが誤った回答をしたとき、原因が「内容(CID)」にあるのか「設定(MVer)」にあるのかを、RIDを照会するだけで切り分けられる。特定のCIDに紐づくRIDを一覧すれば、公開設定の変更履歴もたどれる。行政がAIを使う以上、「なぜAIはそう答えたのか」を後から検証できる仕組みは不可欠であり、ID体系はその土台となる。

 

6.第4の柱:コード体系とガバナンス

 第4の柱は、コード体系とガバナンスである。
 本仕様で用いるコードは、管理主体によって3種類に分けられる。CC(Consortium Code)は研究会が定義・管理する共通コードで、ナレッジID、カテゴリコード、公開範囲コード、AI作成フラグなどが該当する。PC(Public Code)はISO規格や法人番号などの公的コードで、言語コードはISO639-1、組織IDは国コード+法人番号13桁、業種・業界コードは日本標準産業分類(JSIC)を用いる。公的コードを積極採用したのは、グローバルにユニークであり、維持管理を国や国際機関が担ってくれるためである。IC(Internal Code)は各自治体等の各組織が管理する部署コード等で、組織内でユニークであれば形式は自由とした。
 「共通で揃えるべきものは揃え、各組織の裁量に委ねるべきものは委ねる」。すべてを研究会が決めれば現実の運用に合わず、すべてを各組織に委ねれば相互利用ができない。この切り分けが、3種類のコードの狙いである。
 ガバナンス面では、ナレッジを扱う3者の役割を明確にした。「オーナー」はナレッジを作成・発信した組織であり、内容の正確性と最新性に責任を持つ。「ホルダー」はナレッジベースに登録した組織であり、その信頼性とメタデータの正確性に責任を持つ。「システム管理組織」は、システムの運用・保守と配信・アクセス制御を担う。例えば、国が作成した通知を自治体がナレッジベースに登録する場合は、国がオーナー、自治体がホルダーとなる。自治体が自らの手順書を登録する場合は、オーナーとホルダーは同一である。
 開示制御は公開範囲コード(DIS)で行う。0=非公開、1=内部公開、2=限定公開、3=一般公開、9=廃止の5区分である。AIエージェントに対しても「開示許可個人(AI)ID」で個別に許可を与えることができ、AIの種類・権限ごとに与えてよい情報を細かく管理できる。
 また、AI作成フラグ(0=人間作成/1=AI作成/2=共同作成)を設け、人間の確認を経ていないAI作成のナレッジを識別できるようにした。著作権の有無・オープンデータ可否のフラグも必須項目とし、AIによる著作物の不適切な転用にも備えている。

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