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2026.10.01

2026年10月号 連載企画 イノベーションのためのサービスデザイン no.23 デザインを専⾨職から企業のケイパビリティへ ── デジタルスキル標準(DSS)改訂に⾒る、これからのデザインマネジメント

株式会社コンセント/武蔵野美術大学
長谷川 敦士

6.公共領域への⽰唆と、今後の展望

 これらの改訂は、⺠間企業だけでなく公共部⾨にとっても他⼈事ではない。本連載が扱ってきた⾏政サービスデザインの実践も、単発のプロジェクトとして専⾨家に委託するだけでなく、組織のなかにその⼒をどう根づかせるかというデザインマネジメントの課題と、地続きの関係にある。国が定める⼈材標準として、職員の育成計画や外部⼈材の要件定義、委託先の評価軸に、今後ますます参照される可能性が⾼いためである。加えて、「デザインマネジメント実践」がリテラシーとして位置づけられたことは、企画部⾨や現場職員がデザイン専⾨職に頼らずとも、⽇々の業務のなかにある⼩さな探索や⾒直しを「デザイン的な実践」として捉え直せることを意味している。市⺠サービスの改善は、外部のデザイナーだけが担うものではなく、制度設計や窓⼝業務に携わる職員⾃⾝の⽇常的な気づきの積み重ねからも⽣まれうる、という捉え⽅の転換にもつながるはずである。
 最後に、DSS-P主査会議における議論から、筆者の見立てる今後の展望を⼆点共有しておきたい。⼀つは、AIによって制作業務そのものが代替されていくなかで、専⾨性はよりドメインスペシフィックな、すなわち特定の事業領域や地域性に精通した専⾨性へと重⼼を移していくだろうという⾒⽴てである。従来のように業務のなかで⾃然と⾝についていた経験知やスキルを、AI活⽤が進む環境でどう獲得していくのかは、今後さらに議論が必要な課題である。もう⼀つは、専⾨性を「デザイナー」「ビジネスアーキテクト」といった固定的なロールとしてではなく、個々⼈が獲得していく「スキルの組み合わせ」として捉え直す視点である。デザインを⼀部署の専⾨業務から組織全体のケイパビリティへと広げていくという今回の改訂の⽅向性は、公共領域における政策デザインやサービスデザインの実践にも、確かな⼿がかりを与えてくれるはずである。国家標準という共通⾔語が整備されたことで、「うちの部署にとってのデザインとは何か」を問い直す議論が、今後さらに各地の⾏政組織のなかで具体的に始まっていくことを期待したい。

 

出典:
・「デザイン経営」宣⾔(経済産業省・特許庁 産業競争⼒とデザインを考える研究会、2018年5⽉)
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kyousou-design/document/index/01houkokusho.pdf
・⾼度デザイン⼈材育成研究会ガイドライン及び報告書(経済産業省、2019年3⽉)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/20190329_02.pdf
・DX⽩書2023(情報処理推進機構、2023年)
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2023.html
・デジタルスキル標準(DSS)策定の背景・⽬的(経済産業省、2022年12⽉)
https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about.html
・デザインマネジメント⼈材の育成に関するタスクフォース第6回資料(経済産業省、2025年10⽉)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/design_management/006.html
・デジタルスキル標準ver.2.0(経済産業省・情報処理推進機構、2026年4⽉)
https://www.meti.go.jp/files/900018840.pdf

 

長谷川 敦士(はせがわ あつし)
2002年に株式会社コンセントを設立。企業ウェブサイトの設計やサービス開発などを通じ、デザインの社会活用や可能性の探索とともに、企業や行政でのデザイン教育の研究と実践を行う。2019年から武蔵野美術大学造形構想学部教授を兼任。経済産業省/IPA「DX推進スキル標準」策定検討ワーキンググループ(デザイナー)主査をはじめ各種委員等を務める。Service Design Network日本支部共同代表、NPO法人 人間中心設計推進機構副理事長。著書、監訳など多数。

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