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2017.08.10

『行政&情報システム』2017年08月号連載企画 社会価値デザインとIT No.8 プラットフォーム概念と創発

慶應義塾大学SDM研究科附属SDM研究所
研究員 早田 吉伸

1.はじめに
情報分野をはじめビジネス、公共政策など様々な分野において、プラットフォームという言葉が頻繁に使われるようになってきた。多様な領域において課題解決を図り、競争優位性や価値創出をしていく上で、プラットフォームは必要不可欠な視点となっている。今回は、近年、急速に注目が集まっている本概念に着目して述べてみたい。プラットフォームが注目されるようになった背景には情報化とイノベーションへのニーズが存在する。情報化の進展によりネットワーク外部性が飛躍的に高まった。ネットワーク外部性とは、商品やサービスについて、利便性が高まる特性のことであり、ソーシャルネットワークサービスに代表される今日のネットサービスをイメージすれば、理解しやすいのではないだろうか。こうしたネットワーク外部性の高まりにより、創発が生まれやすくなっているのである。創発とは「あるシステムにおいて、その部分の総和とは異なる性質、特徴が、システム全体において現れる現象」とされる(Luisi,2006)。こうした創発こそがイノベーションの源泉であり、創発を生み出すベースがプラットフォームだと捉えてられている。國領(2011)は、プラットフォームの設計から創発に至るためのプロセスを図1のように示している。