機関誌記事(記事単位)

2020.10.09

2020年10月号連載企画 行政におけるウェルビーイングの設計 No.8 コロナ禍の中での大学

早稲田大学
准教授 ドミニク・チェン

これまで、この連載では「痛み」とウェルビーイング概念を導線にして考察を進めてきましたが、COVID-19パンデミック以降の半年では、リモートでのコミュニケーションに伴うストレスや苦しみの声が社会のなかでたくさん上がりました。そしていま、COVID-19の収束を見ないまま、2020年の夏が終わろうとしています。
わたしの勤める大学での春学期は全面オンライン授業となり、この数カ月間はオンデマンド映像とリアルタイム配信による講義や演習の対応に追われました。前回はコミュニケーション相手と共に在ると感じられることを指す「共在感覚」の重要性を見ました。オンライン教育の現場においては遠隔にいる教員や学生同士が画面越しに共在感覚を得られるかどうかが大きな焦点となりました。わたしの周りでも、ウェブ上でも、物理的な教室における対面授業では、当たり前のように感じられていた共在感覚が、リモートになった途端薄らいでしまうことに戸惑う教員や学生の姿が多く見られました。わたし自身も試行錯誤を重ねて、なんとか授業をこなした、というのが実態です。