機関誌記事(記事単位)

2022.10.10

2022年10月号 トピックス アフターコロナを見据えた観光DXの取組

観光庁観光地域振興部観光資源課
新コンテンツ開発推進室長
佐藤 司

取材/狩野 英司(一般社団法人行政情報システム研究所)
文/森嶋 良子

 新型コロナウィルス感染症の流行は様々な業界に大きな影響を及ぼした。中でも大きな打撃を受けたのが観光業界だ。国内外の観光客は大幅に減少し、いまだかつての好況が戻る気配は見えない。しかし現状を嘆いてばかりもいられない。ピンチをチャンスに変えるべく、新しい社会情勢に対応した観光業界へと進化するための動きが始まっている。中でも観光庁では、観光産業の現状を打破する手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)に期待を寄せ、近年、DX推進を後押しする事業を積極的に展開してきた。

 そこで、同庁観光地域振興部観光資源課で新コンテンツ開発推進室長を務める佐藤司氏に、 観光産業を取り巻く課題や課題解決に向けた観光DX推進の取組、今後の展望等について話を聞いた。

 

1.観光産業が直面する課題とDXによる解決

- まず初めに、観光産業を取り巻く状況についてお聞きします。最近の状況の変化や直面する課題について、どのように認識していますか。
佐藤:近年、観光産業ではインバウンド需要の増加が続いていました。令和元年ごろまでは、海外からの旅行者数や旅行消費額は右肩上がりで、観光地では「待っていればお客さんが来てくれる」という状況にありました。大きな転機となったのは、新型コロナウィルス感染症の流行です。インバウンドが消滅して非常にきびしい状況に置かれると同時に、観光産業が持つ課題が顕在化しました。