機関誌記事(記事単位)

2022.10.10

2022年10月号 トピックス AIを用いた降雨予測の高解像度化と今後の展開

一般財団法人日本気象協会
社会・防災事業部防災マネジメント課
グループリーダー
木谷 和大

1.はじめに

 一般財団法人日本気象協会は、1950年の設立以来、気象・環境・防災等にかかわる調査解析や情報提供を行っています。日本における気象会社のパイオニアとして積み重ねてきた歴史と伝統を持ち、革新的かつ高精度の技術力を礎とし、気象コンサルティングサービスを提供しています。
 近年、深刻な豪雨災害が毎年のように発生しています。気候変動によって激しい降雨の頻度がさらに増加する可能性は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次、第5次報告書やその他の研究で指摘されています。大雨といった極端な気象現象について、精度の高い予測を行うためには、大気(空気)の状態を計算機の中にできるだけ精緻に再現して計算する必要があります。そのため、スーパーコンピュータ(スパコン)と呼ばれる高価な計算機が必要になります。一方で、画像認識・画像生成の分野ではAI(深層学習)を用いて、ぼやけた画像からシャープな画像を生成するような手法が盛んに開発されています。我々はこのAIを用いた手法を応用して、スパコンを用いずとも気象データを精緻化する技術を開発しました。この技術は第2回ディープラーニングビジネス活用アワードで特別賞を受賞しました1。この技術を核にダム管理者向けの「事前放流判断支援サービス」を運用開始しています。

 

1 日本気象協会:日本気象協会、「第2回 ディープラーニング ビジネス活用アワード」にて特別賞を受けました、2020、 https://www.jwa.or.jp/news/2020/10/11302/