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2018.06.10

2018年06月号トピックス 総合無線局監理システムへのRPAの導入に向けて

総務省総合通信基盤局  電波部電波政策課電波利用料企画室 課長補佐 丸山 誠二
総務省総合通信基盤局  電波部電波政策課電波利用料企画室 システム計画係長 岡田 真治

昨今、民間企業では、業務の自動化による生産性向上や働き方改革等を目的として、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)を導入する動きが加速しており、行政の一部の機関においても導入に向けた検討や実証実験が進められている。RPAとは、「一連の定型的なホワイトカラー業務に対して、人間と同様の処理ができるようにした業務自動化の取り組み」であり、従来手作業で行われてきた定型業務を自動化することで、業務処理のスピードと処理能力の向上が図れるとともに、手作業で発生していたミスをなくすことによる業務の精度向上といった効果が期待されている。 総務省総合通信基盤局電波利用料企画室では、無線局の免許申請等処理業務におけるルーチンワークの一部の自動化により作業の効率化を図ることを目的として、総合無線局監理システム(PARTNER)へのRPA の導入を進めている。本事例は広範な業務を視野に入れ、複数年契約で腰を据えて取り組むこととしている点で特徴的な取り組みといえる。本稿では、本取組みの背景や意義、具体的な検討の進め方等を紹介する。

 

―― はじめに、総合無線局監理システム(PARTNER)について紹介ください。

総合無線局監理システム(PARTNER)は、無線局運用に関する申請や利用料徴収、免許交付といった処理を行う無線局監理事務の効率化、電波の利用者への行政サービスの向上および電波行政施策の企画立案等の支援を目的として構築され、1996(平成8)年に運用を開始した全国規模の業務処理システムです(図1)。

PARTNERは大きく8つの業務を処理する機能を有していますが、最も中心となる業務は、無線局等申請処理業務です。全国11か所に設置された総合通信局等の職員(約1,500ユーザ)がアクセスし、年間約100万局の申請等を処理しています。申請は図1にもある通り電子申請と書面申請の2通りがありますが、どちらの方法でも、申請事項等が無線局申請データベースに登録されてから審査を行い、その結果問題がなければ免許を交付するという流れになっています。なお、現時点では約7割が電子申請で行われています。

2に示す通り様々なデータベースがありますが、業務共通データである無線局データと免許人データが中核となります。この二つのデータベースには、現在有効な全ての無線局情報及び免許人情報が記録されております。新たに免許申請がなされた場合には無線局申請データベースに入力を行い、審査が終了すると無線局データに反映を行います。また、再免許申請の場合には既存の無線局データ等と登録内容の確認を行い審査します。これら以外にも、業務内容に合わせてその他の関連するデータも活用しています。

 

――なぜRPAの導入を検討されたのでしょうか。

3は各府省の地方機関における年齢階層別の職員数の傾向です。各職場で高齢化が進み、近い将来、多くのベテラン職員が退職を迎えることになります。このことは少数の若手職員が中心となって業務を担うことを意味するとともに、これらの若手職員へのスキル継承の必要性がますます高まることにもなります。さらに、情報通信技術の発展に伴う新たな無線システムに対応することや様々な通信関連事業の推進など職員が対応する業務は拡大しており、職員への負担は一層重くなることが予想されます。

このような状況の中、総合通信局等で行われている免許審査業務等においてシステム側で何らかの支援ができないかとの考えに至りました。しかしながら、PARTNERは大規模なシステムであるため、このようなシステム変更を行うことはかなりのコストと手間を要することになります。そこで、システム変更の負担を軽減し、かつできるだけコストをかけずかつ短時間で作業の効率化を達成するための手段を検討した結果、RPAの導入に至りました。

 

――具体的にどの業務に適用するのでしょうか。

現時点では、1,500全てのユーザに導入するのではなく、まずは100ユーザを対象として2019(平成31)年1月からの試験的な導入を考えています。また、どの業務に適用するかは決め打ちにしていません。総合通信局等の職員などの現場の声を聞きながら候補を特定し、POCを回していくことが大事だと考えており、現在、どの業務にRPAを用いるべきか整理を進めている段階です。具体的にどの様な業務を対象とするかは整理中ですが、一例を挙げると、PARTNERは運用を開始して20年以上経過しており、必要に応じて機能追加を都度行ってきたシステムであることから、結果として業務分類が非常に複雑になっており、ある処理を行うにあたって複数の業務の画面を参照しなければならない状況となっています。このような業務をまたがる処理について、RPAを用いて1つの画面で処理できるようになることを想定しています(図4のユニファイド・デスクトップ機能)。

その他にも、無線局免許の処理では、局種ごとに異なる入力項目のチェックをはじめとして定型作業が数多く存在しており、本来であればこれらをシステムに組み込むための改修を行うことが望ましいのですが、お話ししたようにPARTNER自体が複雑で改修が容易でないため、このような処理にRPAを導入して審査業務を補助することで、職員の利便性の向上、及び作業の効率化を図れればと考えています。

なお、RPAは全自動型と半自動型(アシスト型)の2種類に大別されます。今回はシステム側の改修を行うこと無く、職員の定型作業の一部をロボット化することで職員の負担軽減及びミスの削減を主眼としていますが、引き続き職員が審査を行いますので、半自動型を導入することとしました。そして、定型作業に要する時間が短縮されることで、職員は新たな無線システムへの対応や免許人からの問い合わせへの対応等により注力できることから、行政サービスの向上にもつながるものと考えています。

 

――RPA導入は各総合通信局にはすんなり受け入れられたのでしょうか。

その点は慎重を期して進めております。まず、RPAでどのようなことが可能になるか職員に知ってもらうことが必要になりますので、総合通信局等の職員が一堂に会する会議でRPAのデモを行い、動作イメージをつかんでもらう機会を設けました。その際、RPAに理解のある職員にポジティブな形で参画していただいたことが、コンセンサスの形成につながる良い結果をもたらしました。現在は、アンケートを行い、どのような作業を自動化したいのかニーズ把握を行っているところです。アンケートの結果、合わせて約40件の処理作業に関して適用の要望が出ていますが、その項目は各局で異なっているため、出てきた項目に関して本省側でRPAを用いて自動化できるかどうかの判断と類似する要望の集約等を行い、絞り込みをしたうえで、その中から特に効果が見込まれるものを選択し、2 3の処理に適用することからスタートしたいと考えています。このようなプロセスを経て来年1月に導入する際には、マニュアルを職員に配布して手順を習得してもらう予定です。

 

――RPAの行政機関への本格的導入は過去に例がないものと思いますが、調達はどのように行ったのでしょうか。

現在PARTNERの基盤更改を並行して進めており、この更改に付随してRPAの導入を行うという位置づけになっております。RPAはロボットをコントロールする部分のサーバの借り入れ及び関連するソフトウェアという形で調達を行っています。

RPAは各社から様々な製品が提供されていますが、今回の製品選定にあたっては、次の3つのポイントを重視しました。1点目は、職員が画面上で確認しながら作業を進められるよう全自動型ではなく半自動型であること。2点目は、異なる業務処理の結果を統合して一覧表示できること。そして3点目として、今回は対象ユーザを限定して導入しますが、将来的に1,500ユーザへ拡大することを見越し、ルール配信や利用状況の確認を本省側で一括管理できることです。このような観点で仕様書を作成し調達を行った結果、アイティフォー社のRPA業務自動化ソリューション「NICE Advanced Process Automation」が落札されました。

 

――来年1月の導入以降の展開について、現時点での構想があればお聞かせいただけますでしょうか。

まずは導入後に職員の声を聞いて、必要に応じて修正を施すことが先決であると考えています。その上で、現場を含めた合意が得られれば、対象ユーザや処理数を拡大したいと考えています。さらに、将来的には、技術の進展に伴う法令改正や無線規格の変更に伴う審査項目の変化、チェックする観点の変化へ柔軟に対応するためにRPAを運用したり、利用料徴収データや無線局データ等をチェックして、必要に応じてアラートを出す処理について、AIRPAを組み合わせたりすることで対象業務の拡大を図れればと考えています。