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2018.08.10

2018年08月号連載 研究員コラム 自治体におけるオープンデータ共同サイト設置がもたらす効果に関する考察

一般社団法人行政情報システム研究所
研究員 松本 智史

はじめに

 官民協働の推進や行政の透明性向上の観点から、国や地方自治体においてオープンデータに関する取り組みが進められて久しいが、オープンデータが初めて法律によって規定されたのは、201612月に公布された官民データ活用推進基本法によってであった。これにより、国および地方自治体はオープンデータに関する取組を推進することが法律上も求められることとなった。国については2017年度から世界最先端IT国家創造宣言と併せて官民データ活用推進計画が策定されて1年ごとに改定されており、その中でオープンデータに関する取組事項が規定されている。また、地方自治体についても、官民データ活用の推進に関する基本的な計画を策定することが、都道府県では法的義務として、市町村では努力義務として課されている。(官民データ活用推進基本法第9条)

では、実際のところどこまでオープンデータに関する取組は進んでいるのだろうか。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が公表した資料によると、オープンデータに関する取組が済んでいる自治体数の割合は、全自治体数のうちのおよそ17%にとどまっている(20184月末時点)。こうした中、現在、全国の自治体が様々なアプローチでオープンデータの取組を推進しているが、近年徐々に増えて事例が増えてきているのが、複数の自治体が一つのサイトでデータを公開する「共同サイト」の取組である。そこで本稿では、この「共同サイト」による取組によってオープンデータがどの程度推進されているのかを考察することとしたい。

 オープンデータ取組済み市町村数の比較結果

 まず、「共同サイト」が開設されている6都道府県下にある市町村と、それ以外の都道府県下にある市町村について、それぞれどの程度の自治体がオープンデータに取り組んでいるかについて比較を行った。結果、オープンデータに取組済みの市町村の割合は、共同サイトが開設されていない都道府県(以下「共同サイト未開設都道府県」)では約16%246自治体/1553自治体)にとどまっているのに対し、共同サイトが開設されている都道府県(以下「共同サイト開設済み都道府県」)では約70%159自治体/228自治体)に達しており、大きな差が存在することが確認できた。

以上から、共同サイトが開設されている都道府県では、それ以外の都道府県と比較して居住地域のオープンデータにアクセスできる機会ははるかに多いことが確認できた。

 共同サイト開設済み都道府県におけるオープンデータの質の検証

 次に、共同サイト開設済み都道府県と、共同サイト未開設都道府県の間でのデータセットの質を比較する。データセット数が多くなる一方で、質の低下が発生していないかを検証するためである。質の評価は、データセット形式の5つ星スキームに基づく分類を利用して行った。具体的には、機械判読可能とされる3つ星以上のデータセット(例:csv形式)が公開されていると評価されている自治体がどの程度の割合を占めるかを比較した。

その結果、共同サイト開設済み都道府県では、3つ星以上の形式でデータを公開している自治体の割合が約76%であるのに対し、共同サイト未開設都道府県では約86%となっており、共同サイト開設済み都道府県の方が、共同サイト未開設都道府県を上回った。この結果から、共同サイトの開設によってオープンデータ実施済み自治体の裾野は大きく拡がったにも関わらず、質は落ちておらず、むしろより高くなっていることが確認できた。

 考察

 前節で提示した調査結果から、共同サイトの設置によって、個別の自治体の取組に依存している地域よりも、共同サイトにより共同で取組を行っている地域のほうが、オープンデータの取組が推進される傾向があることが明らかとなった。この方式は参加する自治体の障壁が低いこともあり、特に全くオープンデータについて取り組んでこなかった自治体が参加することによるデータ公開促進に貢献していると考えられる。

共同サイトの設置については、都道府県のリーダーシップや協議会のサイト運営といった参加する自治体とは別の負荷がかかることから、すべての都道府県において取組が容易にできるとは限らないし、これから策定される基本計画の内容等にも影響を受けることになると思われる。自治体におけるオープンデータの取組については、これから本格的に推進のフェーズに入っていくと想定される。本稿で見てきたような複数団体が協力してデータを公開できるような場の提供がオープンデータ推進に関するアイディアの一つになり得るであろう。