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2019.10.10

2019年10月号トピックス インドのデジタル公共財”India Stack”に見る、日本の未来の将来像

経済産業省商務情報政策局 情報技術利用促進課長 瀧島 勇樹
経済産業省 参事(ニューデリー産業調査員)小野澤 恵一
経済産業省商務情報政策局 情報プロジェクト室 室長補佐 守安 あざみ

1.はじめに

デジタル時代に、「公共」の役割はどうあるべきだろうか。
国家や行政が社会の中で担う役割、言い換えれば「公」と「私」との関係は、長い歴史の中で常に変化してきた。近代において、国家は、国防や治安維持といった役割に加え、時代の要請に応じて「大きな政府」として、社会福祉、産業政策などあらゆる領域に積極的に手を広げてきた。1980年代以降は、政府の非効率性への批判が高まり、世界的に「小さな政府」への転換がなされ、政府支出や規制、市民の経済的負担を抑え、企業の社会経済活動の自由を重視し、市場の見えざる手によって世の中の問題を解決していこう、というアプローチを重視する時代に入った。ただ、こうした変化の中でも、公的なサービスは、人々から税金という形で資金を集め、官僚組織をベースに、統一的なサービスを提供することによって成り立っている。
社会の成熟化にともない、個人のニーズは多様化している。また、人々は日常、デジタル化され、ユーザーサイドからデザインされた使い勝手のよい民間サービスを享受している。公的主体が提供する統一的なサービス、あるいは縦割りで書類を何度も書かないといけないようなサービスは、個人の満足を得られにくい。