機関誌記事(記事単位)

2021.02.10

2021年2月号特集 林業研修業務へのVRの導入

全国森林組合連合会 系統事業部長 菊地 英晃
農林中央金庫 営業企画部総括グループ(森林班) 部長代理 森 太一
株式会社アルファコード 代表取締役社長CEO 水野 拓宏

はじめに

日本は世界屈指の森林国である。国土の3分の2が森林に覆われ、その多くが主伐期を迎えている。森林は国民生活にとって欠くことのできない財産であり、多くの森林が成熟期を迎える中、森林を適切に管理するとともに、森林資源の循環利用を進めることが必要とされている。その森林の適切な保全・利用に欠くことのできない職業が林業である。日本の林業従事者は他産業と同様に減少傾向で推移しており、林業においても担い手確保は重要な課題である。また、日本の林業における産業別死傷年千人率(千人あたりの死傷者数)は、20.8人(2019年度時点、全産業平均の約9倍)と著しく高い水準にあり、林業従事者の確保のためにも労働安全性の向上は必須の課題となっている。
こうした環境を踏まえ、全国森林組合連合会では、「緑の雇用」事業を通じた女性を含めた若年層を中心に新規就業者の確保・育成や、日本伐木チャンピオンシップ(JLC)の開催を通じて、新規林業就業者数の拡大および林業技術および安全作業意識の向上、林業の社会的地位向上に取り組んでいる。なお、JLCは世界伐木チャンピオンシップ(WLC)に出場する正式な日本代表選手を選出する場でもある。
一昨年8月には労働安全衛生規則が一部改正され、伐木・かかり木(伐採した木が思いもよらない方向に倒れたことによって途中で近くの木に引っかかってしまった状態)の処理および造材の作業における危険等を防止するため、①チェンソーによる伐木等の業務の特別教育を拡充、②かかり木処理における禁止事項の規定、③チェンソー使用時における防護衣着用の義務化等について定められたところであり、林業の労働安全性向上は国を挙げて取り組んでいる状況である。