機関誌記事(記事単位)

2021.02.10

2021年2月号特集 日本郵便におけるAI・ロボティクスによる物流・配送改革

日本郵便株式会社 オペレーション改革部
木野 俊輔、伊藤 康浩
取材・文/平野 隆朗

少子高齢化に伴う労働人口の減少に加え、急速に伸びたネットショッピングの影響で宅配便の取扱個数は増加傾向にあり、物流業界では現在、人手不足という大きな課題を抱えている。労働人口の増加が見込めない以上、今後も増加が見込まれる取扱個数に対応するためには業務の効率化は必要不可欠であり、物流各社は対応を迫られている。
そのような中、ゆうパックなど宅配事業を手掛ける日本郵便株式会社は近年、配送業務へのAIやロボティクス等の新技術の活用を積極的に推進している。
これらの活動について、新技術を活用した物流ネットワークやコミュニティの維持・強化に取り組む行政機関や自治体の参考にすべく、同社でAIやロボティクスの導入に取り組むオペレーション改革部の木野俊輔氏と伊藤康浩氏にお話を伺った。

1.日本郵便における業務効率化取組の背景

共働き世帯や単身世帯の増加、eコマース市場の拡大などにより、日本における個人の宅配便利用の機会は拡大しています。日本郵便株式会社(以下「当社」)においても、ゆうパックの取扱個数は2010年度の3億4千万個から2019年度は9億7千万個と10年間で約3倍に増加しており、2024~27年度には更に15億個程度まで増加すると見込んでいます。
一方、我が国の労働人口は減少しているうえ、昨今ではコロナ禍における非対面での受け取りの需要が高まるなど、当社においても効率的な荷物の配送ができる環境を構築する必要性が高まっています。
そのような状況下において、当社は「身近で差し出し、身近で受け取り」をコンセプトに、これまでもゆうパックのサービス改善に取り組んできました。例えば、荷物の「差し出しやすさ」を追求したサービスとしては、「ゆうパックスマホ割」があります。これは、宛名ラベルの手書きが不要、相手の住所が分からなくても荷物の配達が可能など、差出人の負担を軽減することができます。また、荷物の「受け取りやすさ」を向上させるサービスとしては、ゆうパックのお届け日時や不在通知をLINEやメールでお知らせしてくれる「eお届け通知」や、お届け日時や受取方法を変更できる「e受取チョイス」などがあります。これらのサービスは、お客様の利便性向上だけではなく、当社としても再配達を減らすことにより配達効率の向上につながると考えております。