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2022.04.15

2022年04月号 特集コラム デジタル庁は何を受け継ぎ、変えたのか

一般社団法人 行政情報システム研究所
主席研究員
狩野 英司

1.はじめに

 コロナ禍を契機として、きわめて短期間で立ち上げられ、我が国のデジタルトランスフォーメーションの台風の目となってきたデジタル庁。同庁は設立以来、独特の存在感を放ち、その一挙手一投足が大きな関心を集めてきた。今後、我が国でデジタル・ガバメントに取り組むあらゆる機関は、様々な場面で直接・間接に、同庁と関わっていくことになる。
 デジタル庁には官民から大きな期待が寄せられる一方、デジタル化に係る課題が山積する中、できることには限界もある。実際のところ、デジタル庁には、何を、どこまで期待できるのか。その出発点において同庁が置かれた条件を理解しておくことは、我が国の行政デジタル化の動向を理解する上で、重要な意味を持つ。
 デジタル庁設立によって何が変わったのか。そして、それ以上に何が変わらなかったのか。本稿では、同庁の前身である高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT本部」)およびその事務局である内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室(以下「IT室」)との対比を通じて、その役割、位置づけ、政策、体制という切り口から、デジタル庁が置かれた条件を解説する。