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2022.08.12

2022年8月号 連載企画 諸外国における政策デザインの実践 No.3 実験と省察を繰り返し、より良い解決策を導き出す|英国・ポリシーラボ

東京大学大学院工学系研究科
都市工学専攻
井上 拓央

 公的機関による政策や公共サービスの設計・実装のプロセスを変革するため、諸外国・地域の政府・行政機関ではデザイン分野から着想を得た様々なアプローチを導入している。本邦でも、政府が「デジタル・ガバメント実行計画」に基づくサービスデザインの推進を掲げるなど、政策とデザインの関係に対する関心が高まっている。政策デザインにおけるデザインアプローチとは何か、その導入によって公共部門の変革がどのように進んでいるのか、そして今後の展望はどのように描かれているのかを明らかにし、日本での展開に向けた示唆を得ることを目的として、各国・地域の政策デザイン組織へのインタビュー調査を実施した。本連載では、毎回1つの事例を取り上げて、その内容についてご紹介する。

 

1.はじめに

 第3回は、英国政府に設置されている政策デザイン組織「ポリシーラボ」で共同代表を務めるカミラ・ブキャナン(Camilla Buchanan)氏に対して実施したインタビュー内容をご紹介する。ポリシーラボは、2014年に公務員制度改革計画の一環として内閣府に設置された組織であり、政策立案をよりオープンにすることを組織のミッションとしている(Policy Lab, “About Policy Lab”)。現在は16名で構成されており、デザイナー、リサーチャー、政策立案に関わる行政職員がともにプロジェクトを推進している(Policy Lab, “About Policy Lab”)。ブキャナン氏は英国の国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルや欧州委員会の職員を務めた後、デザインカウンシルの政策アドバイザーとして政府職員に対するデザイン教育を担った。そして2015年から内閣府でデザイン、デジタル分野の政策を担当し、2018年1月からポリシーラボの共同代表を務めている。