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2022.10.10

2022年10月号 特集 法をデジタルネイティブに、電子政府先進国デンマークの「デジタル対応の法律」の取り組み

デンマーク 財務省デジタル政府庁
チーフアドバイザー
クリストファー・ニラウス・オルセン

取材/狩野 英司(行政情報システム研究所)、井上 拓央(同)、増田 睦子(同) 文/末岡 洋子

 福祉国家として知られる北欧デンマークは、行政のデジタル化の分野でも世界をリードしており、 国連経済社会局(UNDESA)が2年おきに実施する「世界電子政府ランキング」でも2018年、 2020年と2回連続で世界第1位1をマークしている。
 そのデンマークでは、2018年に、全ての法案に対してデジタル対応を義務付ける「デジタル対応の法律(Digital-ready legislation)」を制定し、政策立案の最上流からデジタルネイティブな行政サービスを徹底しようとしている。

 「デジタル対応の法律」事務局でチーフアドバイザーを務めるクリストファー・ニラウス・オルセン(Kristoffer Nilaus Olsen)氏に同法律について話を伺った。

1 https://publicadministration.un.org/en/Research/UN-e-Government-Surveys

 

1.法案段階でデジタル対応を義務付ける「デジタル対応の法律」

- デンマークで2018年に「デジタル対応の法律(Digital-ready legislation)」が制定されました。この法律はどのような意図で制定されたのでしょうか?
オルセン:市民にデジタルやデータを活用した行政サービスを提供するにあたって、法律の整備は不可欠です。政府は法律により権限が与えられたことしかできません。一方で、法律は新しいやり方を導入するための土台にもなります。つまり、デジタルサービスにとって、法律は障害にも、イネーブラーにもなりうるのです。