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2022.12.10

2022年12月号 連載企画 デジタル社会のデザインプリンシプル no.5 「デジタル社会意識調査」から見る日本のデジタル社会に必要なこと

国際大学GLOCOM
准教授
櫻井 美穂子

1.デジタル社会に対する人々の意識を探る

 本誌2022年6月号で「デジタルガバメントに関する住民ニーズ調査」(デジガバニーズ調査)の結果をご紹介した。この調査は2021年2月にオンライン上で実施したもので、調査結果からは、住民と街との近さ(エンゲージメント)がデジタルガバメントへのニーズにプラスの影響を与えていること、「近隣住民とのつながりやコミュニティづくり」「いいまちに住んでいる満足感」「利便性のある行政サービス」などを生活の中で大切にしている人がパーソナライズサービス(自分の暮らしの状況に応じたオンライン行政サービス)のニーズを持っていることなどが分かった。
 デジガバニーズ調査の目的は、調査タイトルにあるように「デジタルガバメントに対する住民のニーズは何か?」を明らかにすることだった。分析を進めていくと、どうやら明確なニーズを持っていない人々が一定数いることが判明した。回答者およそ4,100人のうち約3分の1の人々にこのような特徴があり、6月号では“デジタル消極層”として原稿の最後にご紹介した。この調査はあくまでデジタルガバメントに対する住民ニーズの深掘りだったので、消極層の人々の存在は副次的な発見だった。