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2018.04.10

2018年04月号特集 英国政府におけるサービスデザインの成り立ちとスヌークSnook社との協働

Snook代表
サラ・ドラムンド
訳/増田 睦子

英国を代表するサービスデザイン組織であるSnook。代表であるSarah Drummund氏は英国でサービスデザインが行政にもたらす可能性について検討され始めた頃からその活動を積極的に行ってきた一人だ。サービスデザインに関する教科書的書籍、「This is Service Design」にも著者として参加している。

Snook社は年間数百件もの公共分野に関するサービスデザインプロジェクトを抱え、一過性ではない永続性を持った能力育成に関するメソッドを経験から生み出している。Drummund氏がどのように行政でのサービスデザイン適用を捉え、また実践しているのか。本稿ではSnook社と政府・自治体との協働事例を交えて、組織内でのサービスデザイン推進のポイントを紹介する。

訳・編集/増田 睦子

はじめに

10年前、私はある政府機関で唯一のデザイナーとして働き、公共サービスの仕組みにおいて、デザインがクリティカルマス(普及へと転じる分岐点)に到達することはあるだろうかと自問していました。経験を積んだプロダクトデザイナーの私にとって、ユーザーをデザインの中心に据え、最終決定前にアイデアを形にするプロセスは、公共部門で革新を起こす方法として理にかなっているように見えました。こうした基本方針を採用すれば、公共サービスをもっと使いやすくでき、第一に人々のニーズを満たし、費用をかけて実装する前に適切なものを構築できることで費用の節約になるはずだと考えました。

人々がちょうど公共セクターの革新でデザインとデザイナーが大きな役割を果たすことを話題にし始めた頃、私は政府のデザイナーになりました。当時、デジタル技術の革新が始まり、オンラインという新しいサービスの場が生まれました。これにより新しい取引が可能になりましたが、ほとんどが非常に使いにくく、ユーザーエクスペリエンス、特にオンラインとオフラインを橋渡しする仕組みがまったく考えられていませんでした。ユーザーエクスペリエンスは副次的なものでしかありませんでした。

2007年頃には、政府に直接応用されたデザインの例はまだほとんどありませんでした。しかし、Sophia Parkerが設立した、Social Innovation Lab Kent SILK)(地方自治体と市民の共同デザインサービスを提供する革新的なラボ)や2006年頃の「健康と革新のデザイン」といった分野に取り組むDesign Council内のREDチームなど、少数派の事例はいくつかありました。こうしたプロジェクトによって、サービスと政治など新しい素材を取り扱う環境で働くデザイナーたちの初期段階のコミュニティは成長しましたが、そうした分野で働く準備ができているデザイナーが不足していることが指摘されました。

10年後、状況はまったく変わりました。10年前からデジタル化は、英国と世界中の政府内でサービスデザインが拡大する動きをサポートする手段になると考えていました。組織こそ、提供するサービスについてよく考える必要があり、また人々はサービスをどのように利用するか、組織間でどのようにデータが動き、さまざまなルートでやり取りすることが可能になるのか考えなければならないと気づきました。それが、政府でサービスデザインの発展が始まった瞬間でした。デジタルがサービスデザインの形勢を変えたのです。

 ワークショップでのドラムンド氏の様子(Snook社提供)

 

政府で拡大するデザイン

英国政府内閣府の一部であるGovernment Digital Service(以下「GDS」)は、政府内で広く選ばれ、利用されるデザインをたくさん生んだ組織です。GDS以前にも取り組みはたくさんありましたが、過去10年の間に行われた最大のデザインへの投資はGDSによって行われました。2011年、GDSは、Martha Lane Fox氏の内閣府への報告書で提案された「デジタル・バイ・デフォルト」戦略を実行するために設立されました。過去6年間にわたって、GDSは政府全体に800人のデザイナーと、主要な組織にデザインの責任者を配属しました。GDSのデザインブログには、デザイナーによる定期的な投稿があり、マクロな変革レベル(政府の複数の部門で展開するプロセス全体)とミクロなインタラクション(画面でフォントがどう機能して、さまざまなデバイスで判読可能になるのか)の両方から、人々にサービスをどのように役立てることができるかを議論しています。さらに、デザイナーとしての経験はなくても、公務員でありながらデザイナーとしてのトレーニングを受け、スキルと考え方を身につけた人による投稿もあります。彼らの誰もが、政府はいかにしてユーザーのニーズを満たすことができるかについて議論しています。ようやくデザインというものが「見た目を良くすること」という時代遅れの共通認識ではなく、「いかに機能するかを検討するクリエイティブなプロセス」として認識されるようになり、私たちは先に進んでいたのだということを実感できるようになりました。

デザインを使って政府の機能を改善することは、ユーザーのために努力するということだと私たちは考えています。「事業を始めたい」というユーザー(市民)について考えてみましょう。英国の場合、市民は5つ以上の部門を訪れ、フォームを提出し、口座を作り、書類作業をこなし、手紙を送らなくてはなりません。このユーザーの視点からシステムを再設計し、手続きを簡単なオンラインのインタラクション1つにまとめることができたら、サービスの提供がどれほど簡単になり、費用対効果も良くなるか想像してみてください。こうしたユーザーエクスペリエンスへの移行には、フロントエンドのユーザーエクスペリエンスをグラフィック、コンテンツ、サービス、インタラクションのデザイナーによって再デザインするだけでなく、それらサービスのバックエンドとの統合も必要となります。これは、さらに大規模で複雑な問題になります。ユーザーエクスペリエンスは法務部門から組織ごとのデータセットを担当するチームまで、全員の仕事に関わっているからです。デジタルのような手段の登場によって、いかに時代遅れのシステムが連携しておらず、ユーザーのためになっていないかを問題として取り上げることができるようになりました。この問題を解決するため、GDSはデザインについて同じような考えを持つ人たちのムーブメントを作り出しました。「ユーザーのニーズから始める」から「何度も反復する」まで、GDSの原則の多くがデザインプロセスに沿った思考や言葉を取り入れています。

GDSの物語には課題や上手くいかなかったことがなかったわけではありませんし(簡単に変革プロセスを始められる組織はありません)、必ずしもデザイン中心の話でもありません。ですが、GDSは大幅な節約を達成し、国のデザイン賞を受賞しました。GOV.UKでは以前の政府のオンラインサービスに比べて素晴らしい体験ができるようになっています。そして、GDSにインスパイアされ、彼らのデザイン原則を取り入れようとする人たちが現れています。彼らはGOV.UKでの基本的なサービスだけでなく、部門を超えてユーザーに役立つサービスにすることに取り組んでおり、今後が期待されます。彼らには政府全体で使用するためのデザインとサービスのパターンと、すべてのサービスのデザインに一貫性を持たせるための拡張可能なデザインシステムがあり、共有されています。彼らはまだ旅の途中ですが、変革に終わりはなく、この分野のデザインにも終わりはありません。政府におけるデザイン原則は、サービスを継続的、反復的に改善し、永遠のベータ版という新しい概念をもたらしています。これは20世紀のデザイン原則のデザインプロセスとは異なるものです。こうした原則や物語が英国政府、地方政府、世界中の人たちにインスピレーションを与えています。そして、長い間、この信念を貫いてきた私たちの仕事の認知度を上げてくれました。公共セクターの組織がようやく人々に役立つサービスのデザインを始めようとしています。 

Snook – 政府におけるサービスデザインの構築

私たちは8年間デザイン会社Snookを運営しており、大規模な政府から小さな議会までさまざまなクライアントとサービスの改良に取り組んできました。しかし、もっと大きくいえば、いかにユーザー中心の組織を構築するか、そのために適切な能力を持つ人たちで構成された組織をどのように作り上げるかという疑問を投げかけてきたといえるでしょう。私たちは、仕事をするときにクライアントの能力を構築することへ特に力を注いでいます。これは「内側からデザインする」という私たちのプログラムの一環として、組織と密に連携し、彼らにデザインについて教えながら、プロジェクトを実施しています。デザインを埋め込むこととはすなわちユーザーをプロセスの中心に据えることです。政府のサービスデザインとは、単にサービスに関するものではなく、組織、政府またはシステムにユーザーを中心とする方法でサービスを提供する能力を持たせることです。私たちのデザインスタジオは、NHS(国民保健サービス)の事故・緊急サービス(社会的弱者をサポートする新しい住宅サービス)を再デザインしたり、テクノロジーによって家庭内暴力に遭った女性をどのようにサポートできるかを調査したりしてきました。私たちの仕事は、テクノロジーやデジタルに依存するものではありませんが、それらは組織内にサービスデザインを持ち込む大きなきっかけになると考えています。

過去数年間で、ユーザーエクスペリエンスを考慮せずにテクノロジーやハードウェアにフォーカスしたデジタル変革プログラムが公共セクターで始まっており、その数が増加していることに気づきました。私たちの使命は、それを変える手助けをして、人に役立つ世界をデザインすることです。デジタルはそれを実現するものであり、答えではないことを忘れないよう、私たちはクライアントをサポートしています。私たちは、ユーザーエクスペリエンスやユーザーに提供するサービスについて、組織に一緒に再考してもらうための秘密兵器としてデジタルを利用しています。また、ITチームやデジタル変革を担当するチームはサービスに疑問を呈し、再デザインする権限を持つことが多いので、ほとんどの状況でデザインの埋め込みに適した手段を用意することができます。 

Cork County Councilでの事例

2017年にはCork County Councilと連携し、ユーザー中心の議会の構築にフォーカスする意識の育成に取り組みました。私たちはデザインによってより良いサービスの構築を望むリーダーのチームと密に連携し、デザイントレーニングを埋め込み、一連のプロジェクトに取り組める事業分野を特定しました。そして、「カスタマーサービス変革」と呼ばれる新しいチームで行われている既存のデジタル変革の取り組みにフォーカスすることになりました。私たちは協力して2つのプロジェクトを選びました。コミュニティの助成プロセスと、評議員が議会に陳情することで住宅問題を抱える住民をサポートするというハウジングサービスの2つです。私たちは「トレーナー」プロジェクトを選ぶとき、表1のような要素を検討します。検討する順番は特に決まっていません。

表1 「トレーナー」プログラムを選ぶ際に検討する要素

実現可能性 技術上、運営上、実現可能か?
測定可能な影響 短期間で影響を容易に測定できるか?
能力の構築 デザイン能力とスキルの構築をサポートするか?
良い知らせ 議会の心をつかむような良い話か?
活動の構築 勢いをつくり、他の部門の人たちを仲間に引き入れられるか?
政治的信念 付加できる仕事が政治の流れにフィットしているか?
ユーザーエクスペリエンス ユーザーエクスペリエンスを明らかに改善するものか?

私たちはリーダーのチームと従来のアジャイルプロセスを見直すとともに、彼らにユーザー調査とデザインスキルを教えました。1つ目のプロジェクト(コミュニティの助成プロセス)は上手くいきました。ユーザーを調査し、ニーズを明確にし、サービスの新しいデザインを試すという基本的なデザインスキルを構築できました。2つ目のプロジェクトは住宅部門と行うものでした。この部門との関係を構築する鍵は、「学習ランチ」にありました。学習ランチとはちょっとしたオープンセッションで、みんなで昼食を食べながら自分たちの仕事について報告する場です。部門間のコミュニケーションや関係構築を促しデザインを構築する重要な要素であり、この時間があったからこそ、お互いにデザインの仕組みの内側を知ることができました。

プロセスはシンプルでアジャイルなものでした。私たちは発見の段階から始め、サービスのユーザー、つまり市民が住居の陳情サービスをどのように使っているかを確認しました。このサービスは、市民が自分の住宅に問題を抱えたときに地方の評議員(以下、「選ばれた議員」)が議会に「陳情」を行います。シャドーイング(密着観察)によって、プロセスの大部分が繰り返しの書類作業であり、データ入力がシステム全体にわたることが分かりました。ユーザー側に立ってみて気づいたことは、評議員が家族の写真、医者のメモ、銀行預金残高明細書などを使用せずに住民の情報を一から提出していたことです。プロセスは最初から最後まで費用がかかり、繰り返しが多いものでした。ユーザーの関わり方が普通と違うので、この方法で上手くいくものか不安がありましたが、サービスチームがまったく気づいていなかった素晴らしい見解をもたらしました。学んだことについて理解を深めた後、私たちは選ばれた評議員、住宅部門および前線で働くスタッフと共同デザインのワークショップを行いました。そこで発見したことを共有し、顧客体験のジャーニーマップを作り、一緒に再デザインに取り組みました。ワークショップではプロセスをフォームごとに印刷し、部屋の中のグループを回りました。この時点で、彼らは「言葉」が重要であること、現状のサービスが必要なことを十分に説明しておらず、分かりにくいということに気づきました。

私たちは、関連するシステムを減らし、評議員による質問を明確化し、その分野のデジタル化を行う、新しいプロセスの計画を細かく立てました。デザインを変更し、多くをオンラインに取り込み、評議員用のフォームの質問を書き直しました。そして実際に運用する前に、選ばれた評議員とカウンセラーと再デザインの試験運用を行いました。この反復によって、実際に導入する前にデザインを試せる場所を設けることができました。陳情を行うなどの作業をユーザーに依頼することで、レイアウトからサービスの手順、これを実施するためのプロセスまですべてをテストしました。大切なのは、カスタマーサービス変革チームがこのプロセスを主導したことです。最初のプロジェクトでデザインの基礎を彼らに教えたことで、プロセスを主導できるようになっていました。

6週間で達成したプロジェクトの成果は大きいものでした。まず、陳情の処理にかかる時間が86%減りました。1つの陳情あたり15分かかっていたものが2分以下に減りました。これは、1か月で管理スタッフあたり1週間分の時間を節約していることになります。対応もすぐに行われるようになりました。承認待ちの時間については100%削減されました。3日間のKPIが設定されていたにも関わらず、以前は数週間かかっていた陳情はすぐに承認されるようになりました。システムに入力されると、回答の約75%をすぐに返すことができます。ダッシュボードはいつでも利用でき、開発委員会用の報告書準備にかかる時間を1か月で半日(年間で6日)節約できるようになりました。また、承認と回答ごとに切手1ユーロ分を節約しています。これは議会と評議員の両方にとって二重の節約になります。議会と評議員にとって年間約12,000ユーロの節約になっていると思います。

しかし、最も大切なことはプロジェクトがステークホルダーの心をつかみ取ったことです。

「私の場合、このプロセスの大半でみんなの考え方を変える必要がありました。はじめは、評議員との共同作業を了承してもらえませんでした。しかしプロセスに住宅部門の上層部が参加し始めてから、彼らは情報の整理やトレーニングワークショップに参加してくれるようになりました。そのときはスキップしてオフィスに戻りましたね。」Karen Fitzgerald、カスタマーサービス変革チーム

Cork州は今後も、デザインを埋め込む取り組みを続けていきます。600ものサービスがある中で、彼らはこれらの再デザインに取り組み、オンラインに移行させ、ユーザーに役立つものにしようとしています。Snookのどの仕事でも、デザインを埋め込むことにフォーカスするときは、人々にこの方法で働きたいと思わせ、そうすることの価値を示す必要があります。私たちはいつも反対や、リスクを回避しようとする行動、「通常の業務」の主張といった抵抗に遭いますが、これらはすべて変化するためのプロセスとしてのデザインに反対するものです。しかし、Cork州や他の多くのケースで、デザインが最終的な結果に影響を与え、コストを削減し、サービスを利用する人々の人生経験をより豊かにできることを分かるはずです。人を自分の仲間に引き入れるプロセスなので、こうした変化は時間がかかります。

もっと斬新な変化を求めている場合は、「スカンクワークス」(※)アプローチを考えてみるのも1つの手です。私たちは政府の外部で革新的なプロジェクトを実行し、まったく別の提供モデルでサービスをいかに実行できるかという新しい考え方を提言しています。2009年、私たちは英国初のオンラインフィードバックプラットフォームであるMyPoliceを構築しました。これは警察がサービス改善に関する新たな対話を生み出すためのもので、刑事司法分野では世界初の試みでした。2011年に新サービスを開始し、スコットランド警察で実験を行いました。このサービス利用を通じて、従来の方法では得られなかった市民からのフィードバックを受けることができ、現地の法令に合わせたサービス変更を達成できました。この製品はBBCで取り上げられ、警察と市民がオンラインでやり取りする方法に大きな影響を与え、国家警察改善局のソーシャルメディアポリシーにも影響し、英国警察がプラットフォームを共有するようになりました。私たちは、社会革新や提供モデルの大きな変化を見せるためのアプローチとしてスカンクワークスを支持しています。システムに完全に導入するには限界がありますが、通常の業務で取り組める別の方法を示してくれます。

 

図1 Cork County Councilにおける取り組みの経緯

(出典)Snook社提供

Snook社がワークショップで利用するマテリアルの数々(Snook社提供) 

ツールやプロセスを超えて

Snookに一番よくある依頼は、サービスデザインを理解してもらうために使える「ツールキットを構築できるか」というものです。その答えは「本当にそう望むなら、できる」ですが、それよりも「測定可能な変化を提供することにフォーカスしたい」と思っています。デザイン能力やデザイン性を持つシステムについて取り上げるなら、スコットランドの公共セクターで現在行われている開発が良い例です。GDS以上に、スコットランドでは過去2年間にわたって政府でデザイン導入が進んでいます。もともと私たちがグラスゴーで始めたことを思うと、誇らしくなります。組織のシステムをデザイン性があるものにするには、リーダーシップ、つまり大きな規模で考えられる能力が必要となり、土台から活動を築きながら、そうした特質を組み合わせます。

スコットランドがいま試しているのがDigital First Service StandardDFSS)です。DFSSは、スコットランド政府が開発したもので、すべてのデジタルサービスが満たさなければならない22の基準です。これにはユーザーに対するサービス(たとえば、申請書の提出)や企業サービス(たとえば、給与明細をオンラインで確認する)などが含まれます。この基準には3つのテーマがあります。

  •   ユーザーのニーズ - 組織の目標やサービス提供の構造よりもユーザーが求めているものにフォーカスする
  •   テクノロジー - どのようにサービスを構築しているか
  •   ビジネスの能力とキャパシティ - 適切なチームにサービスを維持するための十分な時間を与える

この基準は、スコットランドのサービスを継続的に改善し、ユーザーが常にフォーカスの対象となることを目指すものです。最近、Snookはスコットランド政府のためにDFSSの実施状況を再検証しています。基準の実施には改善の余地が見られますが、公共セクターの組織が、ユーザーのニーズを満たし、アクセス可能かどうか検討し、サービスデザインによって考え抜かれたサービスをデザインする能力に基づいて評価されており、良いスタートであるといえます。

このような基準は、デザインを測定するための成熟した考えであり、良いデザインとはどんなものかという最低限の基準を求めるために必要なものです。基準があれば、私たちは、政府の革新の真剣なアプローチとしてデザインを検討する必要があるという確信をもって仕事に取り組むことができます。DFSSのような方法で政策的にデザインを適用していかないと、「あると便利」なだけで、通常の業務に重要でないものになってしまいます。しかしデザインは通常の業務に欠かせないもので、市民に提供するサービスを市民に役に立つものにする力を持っています。

世界中の政府は、デザインについてさまざまな段階にあります。心配なのは、どの段階でもデザインやユーザーのニーズを検討していない大規模なデジタル変革プログラムが存在することです。そうしたプログラムを見つけ、デザインによっていまの仕事をいかに変えられるか検討するよう彼らを促しましょう。このアプローチはとてもシンプルです。人々が必要とするものを見つけ、ユーザー視点からスタッフのサービス提供までユーザーエクスペリエンス全体を考え、取り入れたい変化をテストしてみましょう。それから導入し、結果を測定し、成功を共有します。そして、そのやり方を反復し、広げていくのです。それが政府にデザインを埋め込むプロセスです。

 

イベントで登壇するドラムンド氏(Snook社提供) 

 

サラ ドラムンド(Sarah Drummund)

サービスデザイナー。デザイン事務所SnookのCEO。
サービスデザイナーとしてMyPolice、CycleHack、Dearest Scotland、Alloa Pride、The Matterなど数々のプロジェクトを共同設立。これらの業績が評価を受け、Googleのフェローシップを授与される。グッド誌による「創造的な方法でグローバルな問題に取り組む100人」にも選ばれる。
Snook社の主な顧客としては、TescoやSodexoのようなグローバル企業。またスコットランド政府、英国内閣府、政府デジタルサービス(GDS)などの公共部門組織まで多岐に渡っている。
オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学やグラスゴー芸術学院などの教育機関で、次世代のデザイナーを指導しており、彼女やSnookに関するプロジェクトやその知見についてはグローバルメディアや書籍にも紹介されている。