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2019.10.10

2019年10月号連載企画 行政情報化新時代 No.50 参院選から見た選挙とネットの課題

杏林大学総合政策学部
准教授 木暮 健太郎

1.はじめに

2019年7月21日、25回目となる参院選が行われた。いわゆる「亥年選挙(※1)」ということもあり、低投票率が予想されていたが、選挙後に発表されたデータによれば、投票率はついに24年ぶりに50%を下回り、48.8%となった。国政選挙としては、1995年の参院選で記録した44.5%に次いで、戦後2番目に低い投票率である(※2)。
こうした傾向の一方、期日前投票の投票者数は170万人を超え、前回2016年の参院選と比べ、約7%増加し、過去最高となった(※3)。2003年に導入されて以降、期日前投票を利用する有権者の割合は増え続けており、広く社会に浸透しつつあるといえるだろう。
とはいえ、国政選挙であれ地方選挙であれ、投票率の低下に歯止めがかからない状態は続いている。さまざまな要因が複合的に影響していると考えられるが、筆者が指摘したように、投票率の低下には、投票制度そのものが要因となっている可能性も考えられる(※4)。ライフスタイルの変化やネットの普及な
どを鑑みて、時代に即した選挙の在り方、あるいは投票の方法について真剣に考える時期にきているといえるだろう。
また、2013年に解禁されてから、参院選としては3回目のネット選挙となった。今回、ネットが選挙に与えた影響も大きいと考えられるため、インターネットの効果という面も考慮に入れながら、今回の参院選を振り返ってみたい。

(※1)12年に一度、統一地方選挙と通常選挙(参院選)が同時に行われることを指しており、ある種の選挙疲れから投票率が低下することを意味している。ちょうど干支が亥にあたることから亥年選挙と呼ばれる。

(※2)総務省による発表資料より。<http://www.soumu.go.jp/senkyo/25sansokuhou/index.html>

(※3)「参院選、期日前投票は過去最高」『毎日新聞』2019年7月21日。

(※4)木暮健太郎「投票のデザイン再構築とネット選挙」『行政&情報システム』第54巻第3号、2018年、80-83頁。