WEBコラム

2020.12.25

日本・デンマーク政府関係者によるアジャイル型開発に関する意見交換会を開催

近年、政府や自治体では、徐々にアジャイル型開発への関心が高まっていますが、まだ本格的な導入に踏み切っている団体はわずかです。他方で諸外国では既に多くの国々でアジャイル型開発の実践事例の蓄積が進みつつあります。このような状況を踏まえ、当研究所では、昨年度から「行政機関におけるアジャイル型開発の導入に関する調査研究」 を実施したり、機関誌『行政&情報システム』でアジャイル型開発を紹介したりしてきましたが(例:2020年4月号特集)、その際に度々取り上げてきたのがデンマーク政府での事例でした。
そこで今回、同国での取組を直接、日本の行政機関でアジャイル型開発に関わってこられた方に紹介し、今後のアジャイル型開発の推進に向けた取組の参考にするとともに、両国の交流の場とすることを目的として、12/16(水)に当研究所とデンマークのロスキレ大学の主催による意見交換会を開催しました。
意見交換会には、デンマーク側からは同国政府デジタル化庁でアジャイル型開発の推進に携わるKaren Ejersbo Iversen氏、同国政府ICTカウンシルの委員を務めるロスキレ大学教授 Jan Pries-Heje氏、および同国政府のデジタル化の動向に詳しい同大学准教授の安岡美佳氏に参加いただきました。安岡氏には、前述の調査研究における有識者ヒアリングに協力いただいたほか、『行政&情報システム』12月号でも同国政府におけるアジャイル型開発に関する解説記事をご寄稿いただいており、本会もそのご縁で実現したものでした。
日本側からは、IT総合戦略室、経済産業省、会計検査院、神戸市でアジャイル型開発に携わってこられた行政職員や政府CIO補佐官などの実務経験者に参加いただきました。
会では冒頭、当研究所より日本におけるアジャイル型開発の現状を説明した後に、デンマーク側のKaren Ejersbo Iversen氏及びJan Pries-Heje氏の両名より、同国におけるアジャイル型開発の導入状況について、スクラム手法実践の原則、課題解決のアプローチ、スクラムの実施体制等を中心に、実例を交えて紹介いただきました。その後、安岡氏のコーディネートのもと行われた意見交換では、アジャイル開発を行う際に重要な役割を担うプロダクトオーナーの人選や動機付け、事業者の選定方法などについて、デンマーク政府がアジャイル型開発を行う際のプロジェクトチーム選定のために行っているスクラムキャンプのあり方を中心に情報共有が行われました。
意見交換を通じて、両国の間の課題認識には共通項が存在することが認められました。一方で、具体的な取組においてはデンマーク側はアジャイル型開発実践に関する豊富な実績を持ち、参考になる部分が多々あることが確認できました。
当研究所としては、今後とも内外のアジャイル開発の動向を注視しながら、こうした意見交換の場を設けていきたいと考えています。